図3-3-2-1 人口密度
以下、図3-3-2-28まで2015年国勢調査の小地域統計から作成。凡例の( )内の数値は小地域数
まずは人口密度を図3-3-2-1に示した。山手線のすぐ西側にあたる芝地区の南部から高輪地区の北部にかけて人口密度が高い地域が集中している。これらの地域は、前述したとおり、住宅地維持ゾーンおよび住宅・業務協調ゾーンに指定されており、平成二七年(二〇一五)現在も住宅が維持されていることがわかる。また、山手線の東側にあたる芝浦四丁目や港南三・四丁目も人口密度が高くなっている。この地域は前節で指摘したとおり、大型民間マンションの建設により人口が増加していた地域である。
一方、芝地区の北部は人口密度が相対的に低い。ここも住宅・業務協調ゾーンに指定されてはいるものの、商業施設や事業所の集積が多く、住宅が相対的に少ないことがわかる。
図3-3-2-2 性比
図3-3-2-2は性比を示している。性比とは女性一〇〇人に対する男性の人数であり、一〇〇を超えると男性が多く住んでいる地域であることを示しており、逆に一〇〇未満であると女性が多く住んでいる地域であること示す。性比が一〇〇を超え、女性よりも男性が多く暮らしている地域は、浜松町駅の東側にあたる地域と、芝地区に集中してみられる。女性より男性が多いことから、若くて単身の男性サラリーマンが多いことが示唆される。一方女性が多い地域は高輪地区と麻布地区の西側であり、高齢女性が多いことが予想される。これらの点については、後の地図を見ながらもう一度検討してみたい。
図3-3-2-3 年少人口比率
図3-3-2-3は年少人口比率である。年少人口とは〇歳から一四歳人口で、労働市場に参入できない若年の年齢層を指す。比率が高い地域は、麻布地区と芝浦港南地区に集中していた。芝浦港南地区については前述したとおり、大型民間マンションの建設により人口が増加している地域であり、夫婦と子どもからなる核家族が多く居住していることがわかる。
図3-3-2-4 生産年齢人口比率
図3-3-2-4は生産年齢人口比率である。生産年齢人口とは一五歳から六四歳人口で、労働市場に参入できる年齢層を指す。比率が高い地域は、芝地区と芝浦港南地区に集中している。性比で指摘したとおり、これらの地域に若い単身男性サラリーマンが多いと予想されたが、生産年齢人口が多い点はこの地図からも支持される。
図3-3-2-5 老年人口比率
図3-3-2-5は老年人口比率である。老年人口とは六五歳以上人口を指す。比率が高い地域は、芝地区の北側、赤坂地区の北西側、麻布地区と高輪地区の西側である。芝地区の北側、赤坂地区の北西側については年少人口比率、生産年齢人口比率ともに低かったことから、高齢化が進行している地域であることがわかる。
図3-3-2-6 後期高齢者比率
図3-3-2-6は後期高齢者比率である。後期高齢者とは七五歳以上人口であり、全人口に占める後期高齢者の比率を示している。後期高齢者にはフレイルと呼ばれる状態になる人が増え、健康状態が優れない人が多くなる年齢層であると指摘されている。港区の平均値は9・3%であり、平均値から五ポイントほど高い地域が、前述した高齢化が進行している地域である芝地区の北側、赤坂地区の北西側にみられる。これらの地域では、年少人口比率、生産年齢人口比率がともに低く、高齢者が単身もしくは夫婦のみで暮らしていることが示唆される。健康状態が悪化した際、地域の住民から気づかれず、サポートも受けられない可能性が危惧される。
図3-3-2-6 後期高齢者比率
図3-3-2-7は未婚者比率である。性比が高い値を示していた、浜松町駅の東側にあたる地域において、未婚者比率が高い。すなわち、これらの地域に若い単身男性サラリーマンが多いと予想されたが、未婚者比率が高い点はこの地図からも見てとれる。
図3-3-2-8 有配偶者比率
図3-3-2-8は有配偶者比率である。芝浦港南地区において高い。この地域は、年少人口比率と生産年齢人口比率も高く、比較的若い核家族が流入し子どもを産み育てる場所となっていることがこの地図からもわかる。
図3-3-2-9 単身世帯比率
図3-3-2-9は単身世帯比率である。単身世帯には、若年単身者と高齢単身者という世代とライフステージを異にする人々が混在しているので、解釈には注意が必要である。芝地区の北側は老年人口比率が高かったことから、高齢単身者が多いことが示唆される。一方、芝地区の南部は生産年齢人口比率が高かったことから、若年単身者が多いことが示唆される。浜松町駅東側は、性比で指摘したとおり、単身男性が多いことがわかる。
図3-3-2-10 核家族世帯比率
図3-3-2-10は核家族世帯比率である。地価が総体的に高い港区の場合、敷地面積の広い邸宅を構え三世代で暮らすといったことは難しいため、単身世帯か核家族世帯が多くなる。そのため、核家族世帯比率は単身世帯比率の逆の分布を示している。芝浦港南地区・高輪地区・麻布地区において比率が高い地域が多くみられる。
図3-3-2-11 持家世帯比率
図3-3-2-11は持家世帯比率である。港区の住宅市街地整備ゾーンにおける、住宅地維持ゾーン、および住宅・業務協調ゾーンにおいて比率が高い地域が広がっている。一方、住機能確保業務複合ゾーンにおいては、比率が低い地域が集中している。これらの地域は持家ではなく、賃貸住宅が多いことがわかる。
図3-3-2-12 公営・都市再生機構・公社の借家世帯比率
図3-3-2-12は公営・都市再生機構・公社の借家世帯比率である。これらの住宅は、計画的に整備されるものであるため、海岸一丁目、港南三・四丁目、芝五丁目など特定の地域に集中している。
図3-3-2-13 民営の借家世帯比率
図3-3-2-13は民営の借家世帯比率である。住宅・業務協調ゾーンおよび住機能確保業務複合ゾーンにおいて、高い値を示す地域が集積している。
図3-3-2-14 一戸建て世帯比率
図3-3-2-14は一戸建て世帯比率である。住宅地維持ゾーンに、比率が高い地域が集中している。一方、新しく開発された芝浦港南地区では一戸建てに住む世帯がほとんどないことがわかる。
図3-3-2-15 雇用者比率
図3-3-2-15は雇用者比率である。国勢調査で用いられている「雇用者」という用語は専門用語であり、被雇用者の意味である。雇われ人ではない労働者、つまり自営業主と区別するために使われる用語である。比率が高い地域は、芝地区の南部から高輪地区、芝浦港南地区に集中していることがわかる。
図3-3-2-16 自営業主・家族従業員比率
図3-3-2-16は自営業主・家族従業員比率である。図3-3-2-15とは逆に芝地区と赤坂地区において比率が高い地域が集中していた。これらの地域は、老年人口比率が高い地域でもある。
図3-3-2-17 製造業従事者比率
図3-3-2-17は製造業従事者比率である。一九八〇年代に東京はグローバル都市と呼ばれるようになり、世界規模で結びついた金融業、保険業、不動産業が経済を牽引するようになる。その前までは、東京も工業都市であり港区も工業都市としての顔を持っていた。その名残から、高輪地区および芝浦港南地区に製造業従業者比率が高い地域が今でも残存している。
図3-3-2-18 情報通信業従事者比率
図3-3-2-18は情報通信業従事者比率である。グローバル化は情報通信技術の進歩とともに引き起こされた。この新しい産業に従事している人の比率が高い地域は、新しく開発された芝浦港南地区に集中している。
図3-3-2-19 卸売・小売業従事者比率
図3-3-2-19は卸売・小売業従事者比率である。港区内で広く遍在しているといえるが、芝地区と高輪地区、そして赤坂地区の西側に多く集積していることがわかる。
図3-3-2-20 金融業・保険業従事者比率
図3-3-2-20は金融業・保険業従事者比率である。前述したとおり、一九八〇年代の経済を牽引し、オフィスビルの需要を刺激し地価バブルを引き起こした産業である。この産業に従事している人の比率が高い地域は、麻布地区・赤坂地区・高輪地区・芝浦港南地区であった。
図3-3-2-21 宿泊業、飲食サービス業従事者比率
図3-3-2-21は宿泊業、飲食サービス業従事者比率である。赤坂地区、芝地区、および芝浦港南地区に比率が高い地域が集中していた。
図3-3-2-22 出生時からの居住者比率
図3-3-2-22は現住地に出生時から居住している人の比率である。芝地区の北部および赤坂地区の西部において比率が高い地域が見られる。これらの地域は、老年人口比率が高い地域でもあった。それに対して、開発が新しく近年大型マンションなどが建設された芝浦港南地区では、流入人口が多いため、比率が低くなっている。
図3-3-2-23 居住年数1年未満比率
図3-3-2-23は現住地居住年数が一年未満の世帯比率である。図3-3-2-22とは逆に、芝浦港南地区で比率が高くなっており、近年の流入人口が多いことがわかる。
図3-3-2-24 自宅で従業している人の比率
国勢調査データの中で数少ない、住民のライフスタイルを表す変数である従業地について検討する。図3-3-2-24は自宅で従業している人の比率である。図3-3-2-22の出生時から居住している人の比率と同様に、芝地区の北部と赤坂地区の西部において比率が高くなっていた。これらの地域は、自営業主・家族従業員比率および卸売・小売業従事者比率が相対的に高い地域であった。また、老年人口比率が高い地域でもあった。したがって、自営で卸売小売業を営む高齢者が多いことがわかる。
図3-3-2-25 自宅外の区内で従業している人の比率
図3-3-2-25は自宅外でありなおかつ港区内で従業している人の比率である。芝地区の南部から高輪地域にかけてと、麻布地区南部にかけて、比率が高い地域が集中していた。港区の外周に近い地域に住む人は港区外で就業することが相対的に多くなるため、港区の中心部に近い地域において、この比率が相対的に高いことがわかる。
図3-3-2-26 区外で従業している人の比率
図3-3-2-26は港区の外で従業している人の比率である。芝浦港南地区および高輪地区において、比率が高い地域が集中していた。これらの地域には、港区外に通勤して働いている人が多く居住していることがわかる。
図3-3-2-27 都外で従業している人の比率
図3-3-2-27は都外で就業している人の比率である。図3-3-2-26と同様に、芝浦港南地区および高輪地区において、比率が高い地域が集中していた。これらの地域には、神奈川県などへ通勤している人も少なからず存在すると推測される。
図3-3-2-28 外国人人口比率
図3-3-2-28は外国人人口比率である。外国人人口が90‰(約一割)以上を示すのは、赤坂地区から麻布地区に集中していた。 (浅川達人)