表5-1-1は、自治庁調査においてサンプル抽出された全国四二三調査地区へのアンケート調査の一部結果を示したものである。町会の名称については、概ね都市部が町内会や町会、自治会などの名称を採用している一方で、町村などの農村部では部落会、字会、区などの名称を用いることが多いことがわかる。また、都市部か農村部かにかかわらず、政令第一五号による廃止命令が出た後においても、概ね七割程度の団体が従来からの活動をほぼ変化させることなく継続させていたようである。六大都市(おそらく東京都区部、大阪市、京都市、横浜市、名古屋市、神戸市を指す)のような大都市においては、町会機能を防犯協会や衛生組合などのような特殊目的のための地域団体が代替する割合が比較的高かったようである。町会の区域についても、従来からの区域を踏襲している場合が全体の三分の二程度を占めているが、六大都市では三分の一程度が戦後になって人為的に再編されている。これは前述のように、大都市部は空襲被害や疎開などの影響で町会組織自体が消滅している場合も多かったため、従来の区割りから抜本的に立て直していく必要に迫られていたことと密接に関連しているものと思われる。
表5-1-1 町会の活動実態調査結果
自治庁編『町内会部落会についての調査』(1956)から作成
表5-1-2は、東京都調査においてサンプル抽出された計一一一の町会のアンケート調査の一部結果を示したものである。サンプル抽出基準は二三区ごとに五町会であったが、中野区が三町会、千代田区と江戸川区が四町会に留まっている。港区からは、愛宕出張所管内の新橋六丁目町会、竹芝出張所管内の本芝町会、三田出張所管内の北四国町会、本村出張所管内の本村町町会、青山出張所管内の青山住宅自治会が調査対象とされている。
町会への加入率については、概ね二三区民全世帯の四分の三程度が既に町会に加入していたと見られる。ただ、この統計は住民登録または食糧配給台帳に基づいており、同居人や店員、職人などのいわゆる準世帯も母数に含まれてしまうため実際の加入率はもう少し高くなり、逆に千代田区や中央区などの企業・商店等が多いところは法人加入の場合が多いため世帯加入率は低くなるであろう、と報告書には記載されている。都心部から墨東地区(隅田川の東側)の下町地域にかけて加入率が比較的高く、山手地域が比較的低くなっているようである。港区は71・5%と旧一五区地域の中では加入率が低い部類に入っている。
町会の活動内容については、非常に幅広い分野にわたっているが、概ねどの町会でも実施している活動としては「慶弔」「薬品配布」「防犯灯」「官公庁指示事項」などが挙げられる。このうち「薬品配布」は現在あまり見られない活動であるが、これは厚生省が展開していた「蚊(か)と蝿(はえ)をなくす運動」が最盛期を迎えていたことと密接に関連していると考えられる。
表5-1-2① 23区町会の活動実態調査結果
東京都総務局編『町会自治会等実態調査報告書』(1956)から作成
表5-1-2② 23区町会の活動実態調査結果
なお、区政協力に関して報告書は次のように綴っている。講和独立直後において既に現代的課題が指摘されている点は注目すべきところである。
この事務も、町会の事業として次第に重要性を増してきた。しかしながら、昔の町会と違って現在公的には町会は何等特別の資格を持っているわけではなく、従来は官公庁もその大部分が町会という団体を対象として事務の連絡、協力依頼等の折衝を行うという建前をとるのではなく、町会長個人、役員個人を相手として両者に結びついているというのが実情であった。
しかし、そうはいっても実質上は町会を相手としているのとほとんど変わりはない。というのは町の有力者なり世話役の多くは町会の役員になっており、町会の役員を通じて行う方が官公庁の側もそれが迅速に徹底されて好都合だからであろう。
したがって、各区の統計調査員の選任や、足立区の税務協力員、品川区の出張所協力員、大田区の地区協力委員、豊島区の保健衛生委員等は大抵町会長と相談して委員を人選するのが普通のようである。
その他警察署、消防署と町会の繋がりは、防犯、防火協会等を通じて非常に緊密なものがあるが、最近は、保健所、福祉事務所等も町会に協力を依頼する面が強くなってきた。官公庁と町会との関係、町会役員と区政協力委員との関係等は今後研究されるべき重要な課題である。 (新垣二郎)