町会の事業活動分野は多岐にわたっており、その内容も個別町会によって千差万別であるため、一概にその活動実態を把握・整理することはほぼ不可能である。ここでは、町会活動を規定する規約に定められている内容から大枠を捉えてみよう。
港区内の町会の規約については、基本的な構成として「総則」「組織」「役員」「事業」「会議」「会計」「附則」という七項目について記載される場合が多い。
「総則」の項では、町会の名称、事務所の場所、結成目的などが記される。概ねどの規約にも「町の発展向上と会員相互の福利増進と親睦を図る」旨の文言が確認できる。まれに、「政治には関与しない」旨を宣言していたり、「いかなる官公署や組織体から命令・強制させられることはない」などと強調していたりするものも見受けられる。
「組織」の項では、当該町会の範囲となる住所、入退会方法、総会への出席権などが記される。居住住民だけではなく、事務所・倉庫・工場、営業所、土地家屋を所有する者で趣旨に賛同する者の加入を認める例もある。そのような場合、準会員、協賛会員、特別会員などとして正会員と区別することもある。
「役員」の項では、理事者層の構成と選出方法、各役員の職務、任期などが記される。確認できた規約のうちで、会長、副会長、会計、監事の四役が置かれない事例は見当たらない。その他、顧問や相談役などを「若干名」置く規定があることもある。また、班長(組長)や地区担当まで規定している場合もある。
「事業」の項では、多くの場合、総務的事項以外としては「防犯、防火、防災に関する事項」「保健衛生に関する事項」「慶弔に関する事項」などが明記されている。それ以外のものとしては、「道路交通に関する事項」「修養慰安に関する事項」「祭祀に関する事項」などが入ってくることもある。会館などの不動産施設を有する町会は、その維持に関する事項も規約に加わってくるが、そこまでは多くない。比較的規模の大きい団体になると、事業実施にあたって部制をとっている場合がある。青年部と婦人部という形で性別ごとの部が置かれることもある。最近は政教分離の考えのもと、祭礼委員会を別途作り寄付集めなどの活動を別組織で行っていることも多い。
「会議」の項では、意思決定を行う形式が記される。必ず明記されているのは総会の開催方法である。その他、臨時総会や役員会などについて明記するかどうかは団体によって異なっている。臨時総会については、会長の召集と会員からの要求という二パターンが規定されている場合が多いが、後者の場合は総会員数の四分の一以上から三分の一以上、二分の一以上、三分の二以上の賛成を要するなどと割合に幅がある。また、総会での議決事項について定めている場合も多い。
「会計」の項では、基本的に四月一日〜三月三一日の会計年度や構成員の会費について記される。納付済みの会費は原則として返還しない旨が記載されている場合が多い。慶弔についても金額まで決められていることもあり、中には役員を一定期間以上務めた場合の慰労金を支出する旨定められているものもある。会費はだいたい毎月一〇〇〜三〇〇円程度のものが多いが、集合住宅や官舎、マンション単位での町会・自治会が共益費という形で徴収する場合は この限りではない。
なお、以前は町会単位で会員名簿を作成することも多かったようであるが、その場合は概ね区域内を複数の班に分けて記されることが多数である。また、名簿のなかには近隣の会社・事業所・商店などの広告が挿入されているが、一九八〇年代までに作成されたものだと、これらの商業広告とともに港区を選挙区とする国会議員や都議会議員、区議会議員の写真付き広告が必ずと言っていいほど見られる(ただし、確認できた限りでは昭和六一年〈一九八六〉以降の会員名簿には見られない)。