時系列的に眺めると、一九九〇年代の前半から中盤には、競輪場外車券売り場(現在のラ・ピスタ新橋、平成一〇年一一月開設)の建設をめぐって、広範囲の町会が立て続けに請願を出す動きが目を引く。町会からの請願は基本的に区議会で採択される場合が多いが、この件に関しては町会によって賛成と反対が入り交じっていたため区議会でも扱いが難しかったようで、複数回にわたって審議継続とされたものの最終的にはほとんどの請願が審査未了のまま任期切れを迎えることとなった。
また、請願件数自体を見てみると、全八二件のうち二〇〇〇年代に入る前までに出された請願が六八件と全体の八割を占めている。近年、請願というルートを通じて町会が意見を表明することが減少傾向にあると言える。ただし、町会長という役職を前面に押し出させて区議会への請願を行う意義が弱くなってきた可能性や、町会内部での合意形成が困難になったため私人の立場で請願を出すことが多くなった可能性も考えられる。あるいは、区役所・支所改革により、地域の声を直接聞くシステムが構築されてきたことも考慮すべきであろう。 (新垣二郎)
表5-2-3 町会による請願活動一覧
各年度の「港区議会年報」から作成。請願者の欄に「町会長」の表記が確認できるもののみをピックアップしている