ボランティアの普及

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地域生活を支える活動の中には、いわゆるボランティアによるものが多く含まれる。ボランティア活動とは、個人の自発的な意思に基づく自主的な活動であり、活動者個人の自己実現への欲求や社会参加意欲が充足されるだけでなく、社会においてはその活動の広がりによって、社会貢献、福祉活動等への関心が高まり、様々な構成員がともに支え合い、交流する地域社会づくりが進むものとされている。
港区では、社会福祉協議会(社協)が中心となりボランティア活動の振興を進めてきた。特に昭和五〇年(一九七五)前後から、高齢化社会を見据えた福祉事業の重要性が認識され、同五一年五月、区は東京都から都内におけるボランティア活動推進モデル地区第一号の指定を受け、同年一二月、社協にボランティアコーナーを開設した。これはボランティア活動の担い手と受け手、また担い手同士をニーズに応じて結びつけ、活動を推進するための組織である。昭和五四年からは情報誌「ボランティア情報」を毎月発行するなど、この時期にボランティアコーナーが中心となって活動推進の基盤づくりが行われた。当時を振り返った資料によれば、既に活動実績のあった自主グループが率先してボランティアコーナーの基盤となる運営体制をつくっていったという。そうした自主グループが中心となり、高齢者(特に一人暮らしの高齢者)のほか、心身障害者とその家族を対象とするボランティア活動や活動に資する講習会などが活発に行われた。講習会の中でも、昭和五七年からスタートした「中学生と障害者とのふれあい講習会」は、生徒たちが当事者から直接体験談を聞くという点で、福祉と教育が連携した先駆的な事業であったといえる。その他、ボランティアコーナーでは福祉バザーやボランティアスクールの運営、ボランティア保険の受付なども行ってきた。
昭和六〇年、国庫補助事業として「ボランティアのまちづくり推進事業(ボラントピア事業)」が始まった。これは、ボランティアコーディネーター等の人的資源、ボランティアセンター等の施設的基盤、ボランティア基金等の財政的基盤を整備し、地域におけるボランティア活動促進と活性化、永続化を図るために、指定地区に二年間で一〇〇〇万円の補助金を出すものである。昭和六三年四月、港区は東京都社会福祉協議会からこの事業の地区指定を受け、二億円のボランティア基金を設置した上で港区社会福祉協議会の中にボランティアセンターを開設した。センターの役割は従来のボランティアコーナーのそれを継承・発展させたものであり、主に①地域住民への情報提供と啓発、②ボランティア養成のための学習・研修の運営、③ボランティアの登録斡旋、④ボランティアの組織化、⑤活動の基盤づくり等に携わっている。
昭和六〇年代以降、区内では業務地開発に伴う地価高騰から、若年層・中堅年代層の郊外移住による定住人口の減少が目立つようになり、結果的に地縁の弱体化と高齢化が進む地域社会を支援する活動・体制がますます求められる状況となっていた。とりわけ在宅福祉・地域福祉を支援するボランティアの役割が注目され、平成四年(一九九二)には「港区ボランティア活動推進基本計画」が港区社会福祉協議会により策定されたほか、活動の担い手を育成するための様々な事業が展開されていく。
図5-3-3-1は、各年度の港区行政資料集をもとに、区内のボランティア登録数の推移を個人と団体に分けて表したものであるが、ボランティアセンターが開設された昭和六三年以降、個人登録数が急激に増加し、平成八年には六〇〇人を超えるまでに至っている。その後、増減を繰り返しながら徐々に個人登録数は減少し、特に平成二七年以降は減少が著しい。団体登録数は昭和五五年頃からほぼ一貫して微増傾向が続き、令和元年(二〇一九)には一〇一団体を数えている。

図5-3-3-1 ボランティア登録数の推移

「港区行政資料集」各年版から作成


港区では、ボランティア個人登録数のピークである平成八年、区内に立地する企業各社の社会貢献担当者のネットワークとして「みなとネット」が発足している。この組織では企業の地域社会貢献活動を推進することを目的とし、月一回の定例会のほか、NPO団体等との協働の下、参加各社の社員、区民が参加できるボランティアイベントを年に一~二回実施してきた。イベント内容は福祉関係に留まらず、国際交流・国際協力、コミュニティ振興、防災、環境保護など多岐にわたる。区にとってのいわゆる関係人口も含めた多様な主体による活動は、業務地・商業地開発が進んだ都心区ならではの取組であると思われる。
港区は平成一四年に第三次港区基本構想、同一五年に港区基本計画を策定した。これに伴い、福祉分野の行政計画として「港区地域保健福祉計画」も策定した。こうした中、港区福祉協議会では住民の自主的・主体的な福祉活動を住民の立場から進めることを目的として「第二次港区地域保健福祉活動計画」が策定された。この計画は、「社会的な孤立や孤独の解消」「子育て支援」「ボランティア・市民活動の推進」「経営改革」等を軸に実効性のある計画として策定されたものである。これ以降、地域生活における様々なニーズへの対処に関して、区民(団体)・NPO・企業などの自主的・主体的な活動と行政サービスによる協働というアプローチが強調され、平成二二年の「第三次港区地域福祉活動計画」、同二八年の「第四次港区地域福祉活動計画」でもその方針は継続・発展している。
地域におけるボランティア活動の促進という面では、地区ごとのボランティアコーナーの開設にも触れておく必要があろう。平成一七年の「高輪地区ボランティアコーナー」開設を皮切りに、同一九年には「赤坂・青山地区ボランティアコーナー」が、同二六年には「麻布地区ボランティアコーナー」と「芝浦港南地区ボランティアコーナー」が開設されている。