NPO団体の整備

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「NPO」とは「Non-Profit Organization」または「Not-for-Profit Organization」の略称である。これは団体の構成員へ収益を分配することを目的としない団体の総称であり、事業で得た収益は社会貢献活動に充てなければならない。NPOは様々な分野(福祉、教育・文化、まちづくり、環境、国際協力など)で、社会の多様化したニーズに応える重要な役割を果たすことが期待される。このうち、「特定非営利活動促進法(NPO法)」に基づき法人格を取得した法人を「特定非営利活動法人(NPO法人)」という。NPO法人設立のためには所轄庁からの「認証」が必要であり、認証後、登記により法人として成立する。また、実績判定期間に所轄庁の「認定」を受けた法人は、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)となり、認定NPO法人は税制上の優遇措置を受けられる。従来の市民活動団体に法人格を付与するためのNPO法は、平成七年の阪神・淡路大震災がきっかけとなり、ボランティア活動を支援する新たな制度として同一〇年に制定された。同法はその後平成二三年、同二八年、令和二年に一部改正されている。
港区では、平成一一年二月に策定された基本計画において、重要課題への的確な対応のために、区民による自主的活動の支援、区民との協働、ボランティアやNPOとの連携を掲げた。また、平成一四年に公表された第三次港区基本構想において、地域福祉をはじめ、まちづくり、教育、国際交流、文化活動といった数多くの分野で行政と区民・各種団体との協働を目指すことが明記された。これは、徐々に進み始めた人口の都心回帰とそれに伴う区民ニーズの多様化、個人の自己実現や社会貢献に対する関心の高まり、新たなコミュニティ形成の必要性などを受け、グローバルな都心区ならではの様々な人材(区民・団体・企業)とパートナーシップを組んで地域の課題解決に取り組んでいくことを意味していた。この協働の担い手として、従来のボランティア団体や企業とともにクローズアップされたのがNPOである。区では平成一四年四月に「戦略事業推進室」を設置し、NPO団体との協働に向けての施設提供(みなとNPOハウス等)、育成、連携事業などを実施していった。
NPO法の施行以降、既に区内には多くのNPOが存在していたが、活動の拠点や対象が区内に存在する団体には、活動基盤が脆弱あるいは不安定な団体も多かった。こうしたNPOを財政的に支援するため、区では平成一五年に「みなとパートナーズ基金」を設置した。基金の原資は平成一五年度の一般会計予算一億円と個人・企業・団体による寄付金(控除対象)であり、積み立てた資金は、NPO活動助成事業や、寄付者の意向に沿った区の事業の経費として使用する。この基金を活用し、区では同年から、区内で活動するNPOやボランティア団体等が行う公益活動を支援するため、その経費の一部を助成する「港区NPO活動助成事業」(年一回募集)を実施してきた。
図5-3-3-2は、各年度の港区行政資料集をもとに、区内に主たる事務所を有するNPO法人の数について、平成一五年以降の推移をまとめたものである。これを見ると、平成二一年頃にかけて法人数が倍以上に増加し、それ以降は約八〇〇団体前後で横ばいの状況が同三〇年頃まで続き、そこからやや減少しつつあることが読み取れる。関係人口が多いグローバルな都心区の特性上、区内のNPOには全国的あるいは国際的な活動を主とする団体も含まれる。他方、区内で地域貢献してきた活動団体が活動を安定化・拡大化するためにNPO法人化した例も少なくない。例えば、障害者の就業支援・自立支援を主な事業内容とする「みなと障がい者福祉事業団」は、平成一〇年に任意団体として設立された後、その事業内容をすべて引き継ぐ形で同一九年にNPO法人となった。現在では区からの受託事業のほか、「障害者総合支援法」に基づく就労支援事業も行っており、指定就労継続支援A型事業所としての福祉喫茶「Café Deux(カフェ・ドゥー)」や、港区が委託する福祉売店「はなみずき」を運営している。  (小山雄一郎)

図5-3-3-2 港区内に主たる事務所を有するNPO法人数

「港区行政資料集」各年版から作成