前述のとおり、平成一八年以降、地区ごとのコミュニティ形成の仕組みの整備とそれを通じた諸実践が行われてきたが、並行してコミュニティ形成の担い手の育成もまた進められてきた。平成一九年、区は明治学院大学との協働連携の形で同大学内に「チャレンジコミュニティ大学(CC大学)」を開設した。これは、港区在住で地域福祉の向上や地域社会の活動に関心があり、修了後に地域で積極的に活躍する意欲のある六〇歳以上の人(もしくは民生委員・児童委員)を対象に、その人が培った知識・経験を地域に生かし、生きがいのある豊かな人生を創造し、また学習を通じて、個々の能力を再開発してもらうことを目的としている。カリキュラムとしては、①福祉や行政関連など地域活動をするにあたっての基礎知識に関すること、②生涯スポーツや校外授業など健康の管理や増進に関すること、③高齢者に身近な法律、社会経済事情、芸術などの教養に関することなどを扱い、学習形態は講義だけではなく、体験学習(健康スポーツ関連など)や実地見学(福祉関連施設など)も実施されている。学習期間は一年間であり、学びのまとめとして地域の課題解決とリーダーの役割をテーマとする宿泊研修会等を実施し、修了式を迎える。
CC大学の修了生は、学習成果を活かすための組織である「チャレンジコミュニティ・クラブ(CCクラブ)」に参加する。CCクラブは平成二〇年三月、CC大学一期生の修了を機に自主運営組織として設立され、①会員相互の情報交換を図ること、②CC大学での学習内容および各自の社会経験等を活用し、コミュニティの醸成、維持、発展に向けた地域活動を推進すること、③地域活動を通じてリーダーを育成すること、④港区のまちづくりや地域ネットワークの構築を支援することなどを主な目的としている。CCクラブは令和二年五月現在六九二人の会員で構成されており、役員会と運営委員会のほか、企画、会報、ホームページ、地域連携、総務の五部会によって運営されている。また、会員は地域ごとに活動する「地域CCクラブ」へ任意で加入する。総合支所の管轄地域別に、「芝CCクラブ(芝地区総合支所地域)」、「明虹会(芝浦港南地区総合支所地域)」「高輪地区CCクラブ(高輪地区総合支所地域)」「3Aクラブ(赤坂・麻布地区総合支所地域)」の四つの地域CCクラブが存在する。
CCクラブの会員は、区の各種委員や町会・自治会役員の活動、コミュニティサロン・カフェの運営、様々な協働事業への参画やNPO活動など、幅広い地域活動において中心的な役割を担っている。平成三〇年に実施された「チャレンジコミュニティ・クラブの実態と活動に関する調査」の結果によると、会員の七割以上が何らかの地域活動あるいは社会福祉活動へ参加しており、活動内容として最も高い比率を占めたのは高齢者支援であった(チャレンジコミュニティ・クラブ地域連携部会編 二〇一九)。このように、高齢化が進む港区においてCCクラブの会員が特に地域福祉活動の重要な担い手となっており、CC大学を通じたコミュニティ・リーダーの育成が確実に実を結んでいるといえよう。 (小山雄一郎)