調整率と都区財政調整制度をめぐる二層の論点

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基本額制度が採用された際には都と各特別区の間では基本的方式についての大きな対立はなかったが、昭和四〇年度の事務移管に伴い事務や区の果たすべき役割は拡大していった。加えて、高度経済成長も背景にして生じた社会資本、生活関係資本の不足も問題となってくる。特別区長会はそれらを背景に美濃部都政に対してほぼ毎年、調整率の上昇を求め、結果として昭和四〇年度当初25%であった調整率が、主に財源保障を重視した調整率の引き上げという形で対応されていった。そして調整率は毎年度引き上げられたのち、昭和四六年度には36・75%となった。さらにその後は引き上げのペースは鈍化したが、同四九年には40%になった。
毎年度都区協議会において決定をする都区財政調整制度は大きく分けると二つの層の調整が必要となる。
一つは、都区財政調整における交付金の総額を調整する領域である。この点については調整率をめぐる議論が争点になる。もう一つはどの事務事業を基準財政需要額の算定に取り入れるのか、あるいは行政需要としての社会的意義を失った事業として算定額の中から減額または削除するか、という事務レベルから積み上げていくことが主になる調整である。
前者はいわば政治的決定として大規模な事務移管や都あるいは特別区の財政状況の大幅な変化に伴う機会に事務レベルでの調整を経て、特別区長会の正副会長と都知事、副知事との間で最終的に議論される。
後者は毎年度変わっていく社会の変化に伴う行政需要の変化に対応する形で行われることとなる。そのため港区一区だけでなく、ブロックによる交渉、財政担当課長会での調整、助役会での調整など、ボトムアップの積み上げ式で議論がなされるものが多い。それぞれの年度で都区財政調整算入事務事業となるか、これまで参入されていた事業から外れることになるか、あるいは算入されている事務事業であるとしても増額か減額かなどが議論される。これらは個別の区における財政需要額の算定に関わり、結果として交付金額、納付金額に影響するため、予算編成においても重要なものとなる。