その後も財政調整制度の改善合理化や新規の需要額への参入、既存事業への増減が行われ、港区への影響も生じた。それらは毎年度のように行われていったのであるが、ここでは港区への影響が大きかった一つの改善合理化の例を示すこととする。
それは昭和六〇年度に行われた元利償還金への地価および低地補正の導入である。これは主に土地の取得経費に関わるもので、その経費は二三区の標準的な経費が単位費用として設定されるものの、そこに地価の高い地域や低い地域などで、補正係数をかけ、地域の状況にできるだけ沿うように土地の取得費が算出される。土地の取得は大規模な金額になることが多く、起債が充当されることが多い。そのため翌年度以降、基準財政需要額の中で起債の元利償還金が算入されることになるが、初年度にはかかっていた補正係数が翌年度以降の基準財政需要額算定においてはかかっていなかった。これは例えば、港区の土地取得にかかる補正係数が200%であり、起債充当が75%であるものとし、二〇〇億円の土地を取得経費として算定されていた場合、五〇億円が一般財源から充てられるが一五〇億円は起債の元利償還金として基準財政需要額に算入されるはずが、標準区経費の一〇〇分の七五、ここでいえば七五億円相当のみ元利償還金として翌年度以降の基準財政需要額として算入されていなかった、というものであった。この状況を改善し、翌年度以降も補正係数がかかったままで算入するものとして制度を改善したものであった。港区においては、新規で公共施設を作る際に地価が高く、土地の取得経費が高額になるため、この改善は港区財政にとって重要なものであった。