平成一〇年の地方自治法等の一部改正による財政調整制度

91 ~ 93 / 407ページ
長年取り組んできた都区制度改革が成就した平成一〇年の地方自治法等の一部改正においては財政調整に関する制度も大きく変更された。特別区の自主性および自律性を高め、基礎的な地方公共団体にふさわしい財政制度とする観点から見直しが行われ、従来政令に全面的に委ねられてきた都区財政調整制度は、その基本事項が地方自治法に規定され、法律上の財源保障制度として明確に位置付けられることになった。新しい地方自治法に規定された主な内容は次のものである。
(1)都区財政調整の目的は、都と特別区の間の財源の均等化を図ること、また、特別区相互間の財源の均衡化を図ること、さらに、特別区の行政の自主的かつ計画的な運営を確保することであり、この趣旨に従って都が条例に基づいて特別区財政調整交付金を交付するものであることが明確化されたこと。
(2)都区の財政調整の財源を固定資産税、特別区土地保有税及び市町村民税法人分の三税(これを調整三税と呼ぶ)とし、特別区財政調整交付金は調整三税のうち都の条例で定める一定割合を総額とすることが規定されたこと。
(3)特別区財政調整交付金は「特別区がひとしくその行うべき事務を遂行することができるように」都が交付するものであるという交付基準が規定され、都区間の役割分担に応じた都区間の財源配分の原則が明示化されるとともに、地方交付税制度に準じる財源保障制度としての性格が明確化されたこと。
(4)こうした法改正を通じて、調整三税が都と特別区の共有財源であり、その一定割合は特別区の固有財源的な性格を有するものであることが明らかになる一方、地方交付税制度にない仕組みであった納付金制度と、算定上財源不足が生じた場合に、都の一般会計から一時借り上げて交付税の一部とする制度で、特別区の都に対する依存心を助長していると指摘されていた、いわゆる、総額補填方式は根拠を失い、廃止されたこと。
すなわち、調整三税による財源の固有性と都と区の共通財源が保障された一方で、特別区側の財政を歪める要素であった納付金制度と総額補填方式を廃止したというものである。こうした中、平成一二年都区間の財源配分割合は、同年二月の都区協議会において特別区側が52%、東京都側が48%とすることで合意された。また、普通交付金は平成一一年度まで95%であったのに対して同一二年度から98%となり、特別交付金がそれぞれ5%から2%に変更された。これは3%が特別区のまちづくり事業のうち、基準財政需要額では算定されない大規模な臨時・特例的事業に充てる財源とされたが、それを普通交付金に戻すよう移行させた。
港区にとってはバブル経済等の影響もあり、制度改正時には納付金を納めていない状態であったが、納付金の廃止が果たされたことは、これまでの念願が実現したのでもあった。その後は、以前からも存在していた問題ではあるが、港区としての財政調整に関わる課題としては、やはりどちらかといえば夜間人口を基本に財政調整の単位が積み重なっている構造になっていることもあり、昼間人口が多く夜間人口が少ない港区にとっては、昼間人口を都区財政調整の需要額にどのように算入させられるようにするか、ということ、また、地価の高い港区において必要な公共施設の設置場所となる土地の買収額が非常に高額になりやすいことへの財政調整上の算入等が残された課題となる。