特別区の国民健康保険事業は昭和三四年一二月に発足した。この事業は特別区の置かれた地域的経済的および歴史的一体性から、給付の内容や保険料等を一本化する必要があり、都が事業にあたって、「特別区国民健康保険事業調整条例」を制定し事業および財源の調整を行い、事業発足時から当面、都の交付金として特別区国保負担金が交付されてきた。
都は昭和五四年に東京都財政再建委員会を設置し、財政再建の検討を行ってきたが、再建策の一つとしてこの特別区国保負担金が見直しの対象として指摘された。そして昭和五五年一二月の特別区長会において、都財政再建委員会からの同五五年度の「財政調整の考え方」が示された。そこで特別区国保交付金の都区財政調整への新規算入が提案され、結果として特別区国庫交付金の一部(事務費および加給付事業)を都区財政調整へ新規算入するとともに、引き続き国保交付金のあり方について特別区と都で協議していくことになった。
その後も国庫負担金の都区財政調整需要額への算入の議論は段階的に実施され、六一都区合意:都区制度改革の基本方向で国保事業の都調整の廃止が都区間で合意され、平成一〇年の地方自治法等の一部改正で「国民健康保険法」の特例としての都の調整措置は廃止されることとなり、同法が施行される同一二年四月一日をもって都の国保交付金が廃止され、都からは府県事務としての項目補助が行われることになった。特別区長会では、当面保険料を統一化するものとし、それにかかる財政調整で補正係数が組まれる形で、基準財政需要額に算入され、国保事業が港区を含む各区で従来の統一的料金により維持できるように運営されることとなった。 (箕輪允智)