特別区税の状況

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それでは、一貫して最も大きな割合を占めている特別区税について、さらに詳しくみていくこととする。表6-5-2-2(*)は特別区税の歳入決算額の推移を示したものであるが、明らかなように、特別区税の中で一貫して最も大きな割合を占めているのは特別区民税であり、九割前後で推移している。一方、特別区民税に次ぐ割合を占める特別区たばこ税は、平成一六年度までは一割台で推移していたが、翌年度以降は同二三・二五年度を除いて一割未満で推移している。
このように、平成一二年度以降、特別区民税は特別区税の九割前後という高い割合で推移してきたが、金額という点では必ずしも常に順調というわけではなかった。具体的には、平成一二年度から同一八年度まで対前年度比で増収を続けてきたが、翌一九年度には対前年度比で五三・八億円の減収となっている。この背景には「三位一体の改革」に伴う特別区民税所得割の税率のフラット化があった(港区企画経営部財政課 二〇一二)。
三位一体の改革とは、地方分権を推進するために平成一六年度から同一八年度にかけて行われた、国庫補助負担金改革、税源移譲および地方交付税改革からなる政策で、税源移譲については、所得税から個人住民税へ三兆円規模の移譲が行われた(総務省資料「『三位一体の改革』の成果」)。そしてそれに伴い、改革前には3%、8%、10%の三本立てであった個人住民税(市町村)の税率は、改革後には6%に一本化(フラット化)されたのである(総務省資料「税源移譲後の所得税・個人住民税の税率」)。
しかし、税率のフラット化の結果、高額所得者が多く居住する港区の特別区民税収は減少することとなった。表6-5-2-3(*)には、港区における特別区民税の所得割額および納税義務者数が、税制改正前の平成一八年度と改正後の同二三年度について示されているが、二〇〇万円以下および二〇〇万円超七〇〇万円以下の課税標準額では、所得割額および納税義務者数共に増加しているのに対して、七〇〇万円超の課税標準額では、納税義務者数は増加しているにもかかわらず、所得割額が減少している。これは、それまで10%の税率が課されていた高所得者層に、4%も低い税率が課されるようになったことの結果である。
特別区民税は平成二一年度から同二三年度、および同二七年度においても対前年度比で減収となっており、特に同二二年度には七一・八億円もの減収となっている。これは、平成二〇年九月に発生した「リーマン・ショック」に端を発する世界的な金融危機とそれに伴う景気低迷の影響であり、バブル経済崩壊後最大の減額幅となった同六年度を超えるものであった(港区企画経営部財政課 二〇一二)。さらに、平成二三年度の減収には、同年三月に発生した東日本大震災による景気の低迷が影響していると考えられる。
しかし、先に納税義務者数の変化でみたように、この間、港区の人口は増加しており、平成一二年度には一七・〇万人であったのが、同二三年度には二二・七万人となっている。このような人口増加にもかかわらず減収に度々見舞われたことは、特別区民税が景気や税制改正の動向に左右されやすい特徴があることを示している(港区企画経営部財政課 二〇一二)。特に港区の場合は高額所得者が多く居住することから、景気の動向が大きく税収に影響する構造があるといえよう。なお、平成二六年度の特別区民税収は、前年度比一一四・〇億円増と大幅な増収となっているが、これは、同二五年末に「上場株式等の譲渡所得等及び配当所得に係る軽減税率の特例措置」が廃止された影響である(港区企画経営部財政課 二〇一六)。