以上は一般会計についてみてきたので、次に特別会計についてみていくこととする。表6-5-2-4(*)は国民健康保険事業会計の歳入決算額の推移を示したものである。まず歳入総額は、平成一二年度の一二一・二億円から令和元年度の二四九・一億円へと約二倍になっており、これは先にみた一般会計の増加傾向と軌を一にしているといえる。しかし、最も基本的な財源である国民健康保険料の割合は低下傾向にあり、平成一七年度までは四割台を占めていたが、翌年度以降は三割台で推移し、同二七~二九年度には二割台にまで低下している。
一方、平成一二年度から同二六年度まで、国民健康保険料に次ぐ割合を占めているのが国庫支出金である。ただし、その割合は低下傾向にあり、平成一六年度までは三割台を占めていたが、翌年度には二割台に、同二七年度には一割台に低下し、同三〇年度と令和元年度には突如として1%未満となっている。そして、国庫支出金に置き換わる形で割合が上昇しているのが都支出金である。すなわち、平成一八年度から同二九年度まで5%前後で推移してきた都支出金の割合が、翌年度には五割台に上昇しているのである。また、これに伴って、療養給付費等交付金、前期高齢者交付金および共同事業交付金が歳入から消えている。このように、平成三〇年度以降の国民健康保険事業は、国民健康保険料と都支出金を主な財源とし、中でも後者が過半を占める歳入構造となったのである。
次に、老人保健医療会計である。表6-5-2-5(*)はその歳入決算額の推移を示したものであるが、平成二〇年度まで主要な財源は支払基金交付金と国庫支出金で、前者が七割前後、後者が二割前後の割合で推移しており、前節でみた同一一年度までの時期と同様である。なお、老人保健制度の対象者は、昭和五八年(一九八三)の制度創設時には七〇歳以上であったが、平成一四年以降に段階的に七五歳以上へ引き上げられることとなった(堀江 二〇一一)。
老人保健制度は平成一九年度をもって廃止され、翌年度から後期高齢者医療制度が開始された。後期高齢者医療制度の対象となるのは老人保健制度と同じ七五歳以上の高齢者であるが、老人保健制度では対象者は国民健康保険や健康保険組合等の被用者保険に加入したまま患者負担が軽減される仕組みであったのに対し、後期高齢者医療制度では対象者は七五歳になると、それまで加入していた国民健康保険や被用者保険から脱退して同制度に移行することとなった。これは、老人保健制度では高齢者と現役世代の費用負担の関係が不明確であるといった問題点が指摘されていたためである。また、運営主体は、老人保健制度では各市町村であったのに対し、後期高齢者医療制度では全市町村が加入する都道府県単位の広域連合となった。そしてその財源は、約五割が公費(国:都道府県:市町村=四:一:一)、約四割が現役世代の保険料(後期高齢者支援金)、約一割が高齢者の保険料とされた(堀江 二〇一一)。
こうして、港区に後期高齢者医療会計が設置されることとなった。表6-5-2-6(*)は同会計の歳入決算額の推移を示したものであるが、後期高齢者医療保険料が六割前後、繰入金、すなわち港区の一般会計が負担する公費がほぼ三割台後半という構成比で安定的に推移していることがわかる。
最後に介護保険会計である。介護保険制度は、高齢化の進展に伴って介護ニーズが増大する中、従来の老人福祉・医療制度による対応には限界があることから、平成一二年度にスタートした。保険者(運営主体)は市町村で、被保険者は六五歳以上の第一号被保険者と四〇歳から六四歳までの第二号被保険者からなる。そして、財源は公費と保険料が五割ずつで、さらに公費は国:都道府県:市町村=二:一:一の割合とされ、第一号被保険者と第二号被保険者の保険料の割合は両者の人口比に基づいて設定されることとなっている(厚生労働省老健局資料「公的介護保険制度の現状と今後の役割 平成三〇年度」)。
表6-5-2-7(*)は介護保険会計の歳入決算額の推移を示したものであるが、歳入総額は平成一二年度の五三・九億円から令和元年度の一六五・八億円へと、約三倍の増加をみせている。次に財源の内訳をみてみると、介護保険料、国庫支出金、支払基金交付金、都支出金および繰入金が主要な財源であること、さらに平成一八年度以降はこれらの構成比がほぼ安定的に推移していることがわかる。なお、ここでの介護保険料は第一号被保険者が支払う保険料で、支払基金交付金は、第二号被保険者が支払った保険料が社会保険診療報酬支払基金にプールされ、そこから交付される財源である(厚生労働省 二〇二一)。 (天羽正継)