自然環境

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港区は緑に恵まれており、特に台地から斜面にかけた部分にはまとまった規模の緑地が数多く存在し、それらが地形の流れに沿って点在する中小規模の緑地と一体となって、自然の生態系を形成していた。しかし、他方で、これらの大規模緑地の中には、大使館、大学、寺社などの準公的な民有地のものが少なくなく、こうした緑地を永続的に維持するとともに、国民が近づける緑とすることが望まれた。また、台地部の概ね第二種住宅専用地域全体に分布する住宅敷地内の細かな緑地は、港区の優れた住環境の基盤であった。そこで、住宅の建て替えに際してもそれらをできる限り守り、失われた緑を補い育てていくことが重要であった。港区では、昭和四九年に「港区みどりを守る条例」を制定し、みどりの保全および創出に取り組んだ。
下町から港湾部にかけては台地部と比べ緑が乏しいため、今後大規模な開発が行われる機会に併せてまとまった緑を創出し、かつ連続化させていくことが課題であった。加えて、港区は水辺のまちでもあったが、埋め立てにより海が市街地から隔てられ、古川においてもその水質や水量が低下し、高速道路の建設によって水辺の魅力はすっかり失われていた。そのため、水辺の近接性の確保、親水空間の整備、水質の改善等によって都市空間の中には水を取り戻すことが望まれた。そのため港区では、区の特性を踏まえつつ、急速なビル化により緑と水が失われていく状況において、緑と水の環境を守り育てるため、緑被率を基軸に公園緑地面積などの長期目標を掲げた「港区緑と水の総合計画」を昭和六三年に策定し、取組を始めた。その後、港区が「港区みどりを守る条例」に基づいて、概ね五年ごとに、区内の樹木や緑地等の緑と、湧水等の自然の水の実態を調査した結果によると、緑と水の現状と目標は図7-4-2-5のようになっており、平成七年には目標であった緑被率18%に達した(表 7-4-2-2)。
一九九〇年代には、港区は「赤坂・芝緑の軸」「青山・麻布緑の軸」「白金・高輪緑の軸」「古川水の軸」「芝浦・港南水の軸」および「台場水の軸」と六つの軸に分け、台地から水際にある地形の特徴や緑と水の骨組みを、固有の空間構造として継承し創出するとともに、防災性の向上につながる将来にわたる港区の環境基盤形成を目指した。これらをつなぐ道筋には、街路樹・植樹帯を整備し、あるいは道筋の魅力ある場、建物の外周や入口等の緑化・修景を進めて、緑の骨組みを充実させた。

図7-4-2-5 昭和63年時の緑の確保目標

「港区緑と水の総合計画」(1988)掲載図から作成

表7-4-2-2 港区の緑被率の推移

「港区の環境リサイクル」令和3年度版、「港区みどりの実態調査(第10次)報告書」(2021)から作成