港区は変化に富んだ魅力ある都市景観を持っていたが、その基盤となっていたのが大規模な緑地や斜面緑地であり、各所の丘や坂道からの素晴らしい眺望が存在した。また、近世以来の史跡、由緒ある寺社、近代建築などまちの歴史を伝える要素は港区の都市空間を特徴付け魅力あるものにしていた。しかし、これらは建物の高層化の中で失われ、あるいは埋没して見えなくなりつつあることが少なくなかった。昭和六三年のマスタープランでは、これらの都市景観の中で保全・活用するとともに、古くからの地名や坂の名前などを含めた文化的伝統を継承していくことを目指した。
加えて、一九九〇年代には、景観については、個性のある街並みの形成を目指した。また、安心して楽しく歩ける道筋、街並みの景観づくりとして、日々の暮らしの道筋をその道がつないでいるまちの特性を生かし、これを基に景観の形成を目指した。歩行者空間の安全性と快適性を確保しつつ道筋に存在する樹木・樹林とつながりの場、ランドマークとなっている様々な資源を生かして、その道とのつながりを高め、街路樹・植樹帯の整備や緑と花による修景、沿道の建築の誘導、サインの整備等を行い、人にやさしく、歩いて楽しい地域の道づくり(ヒューマンモール計画)を進めた。さらに、地域らしさやまちの個性を感じる魅力の情景・場面づくりとして、まちに存在する様々な資源や区内に数多く存在する眺望点とその一帯を魅力の場として整備するとともに、これらの魅力地点の周辺環境およびその眺望の保全を目指した。