区西南部の三つの丘をなす、麻布・白金・高輪の各地域は、豊かな緑と歴史的遺産を継承しつつ、安定した住宅地の環境が形成されていた。住宅の基礎があり、人口密度も高く、緑の多い良好な住宅地であった。台地上には、大使館、寺社、大学、大規模公園等があり、低地部との坂や崖線には緑のある景観がみられた。他方、中央部の古川に沿った低地の部分は、各種の商工業施設と利便性の高い住宅が共存し、親しみのあるいきいきとしたまちを形成している場所があった。
一九九〇年代、この地域でも徐々に人口減少がみられた。そこで、安定した住宅地の環境を守り育てていくために、「定住増進ゾーン」と位置付け、台地部では、豊かな緑や寺社、大使館などの歴史的遺産が作り出す地区のイメージを継承しつつ、住宅地の良好な環境を保全するとともに、円滑な住宅の建て替えを誘導し、居住継続を支援することとした。
また、古川流域の低地の各種の商工業施設と利便性の高い住宅が共存する住・商・工混在地域の特色を生かしたまちづくりを進め、建て替えの推進と一体となった狭あい道路の拡張整備、地域を特徴付ける既存産業の存続を前提とした併用住宅の建て替え支援等により、職住近接型の複合的な住宅の確保を図ることとした。
道路・交通については、幹線道路の少ない地域での補助幹線道路の整備、狭あい道路の多い地域での区画道路の整備・改良を図ることとした。
景観と環境については、この地域にある台地上の良好な住宅地景観を保全、育成していくとともに、大使館、大学、寺社の立地等の固有の歴史文化遺産に配慮した街並み形成を進めることとした。また、有栖川宮記念公園・白金自然教育園、高輪の寺社地、大学等の緑の拠点および古川を生かして緑と水の骨組みを形成していくこととした。さらに、台地と低地をつなぐ斜面緑地や坂道の緑の保全、修景に努めるとともに、古川の水辺空間の再生を図ることとした。