定住人口増加後の課題

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一九九〇年代の課題であった定住人口の減少に対して、四節で述べたように、港区では様々な施策を行った。バブル経済崩壊後の地価下落に伴う都心回帰現象と重なったこともあり、区全体としては、平成八年(一九九六)以降人口増加の傾向となった(図7-5-1-1)。その結果、港区の人口は平成二一年五月には二〇万人台に回復し、令和二年(二〇二〇)一月現在、約二六万人に達した。
住宅関連施策の積極的な展開や土地の高度利用化の進展により、港区では中高層の共同住宅が急激に増加し、平成二七年の国勢調査によると区民の約九割が共同住宅に住んでいる。
そこで、人口増加に伴い、暮らしやすく安心して住み続けられる生活環境の形成を促進するため、平成一五年および同二三年に「港区開発事業に係る定住促進指導要綱」を改正し、日常生活に必要な食料品や日用品などを扱う店舗、医療施設、子育て支援施設、地域防災施設などの地域特性に応じた生活利便施設の整備を積極的に誘導した。また、これまで培われてきた地域コミュニティを持続するとともに、新たな区民を含めたコミュニティ形成が必要となった。言い換えると、港区で従来から暮らしてきた人に加えて、新しく生活を始めた人にとっても住み続けられる生活環境の整備や、外国人居住者の増加、高齢社会の到来に対応できるまちづくりが必要となった。また、都市計画提案制度の創設を踏まえた、地域住民を主体としたまちづくり手法の確立も必要であった。
「港区定住まちづくり条例」も定住人口の確保から良質な都市空間・居住空間の維持・創造へ移行すると同時に、地域住民の発意によるまちづくりのルールを定め、区民の積極的な参加のもと、区民・企業・行政が協働してまちづくりを進めるため、平成一九年に「港区定住まちづくり条例」を全部改正し「港区まちづくり条例」を制定した。新条例は、区民のまちづくりへの参加機会を増やし、まちづくりに関する情報の提供や知識の普及に努めることを区の責務として定めている。

図7-5-1-1 港区の人口の推移

「港区まち・ひと・しごと創生 総合戦略」(2016)から転載