新橋・浜松町周辺の地域は、日本有数の商業地区であり多くの人でにぎわう地域である。平成一四年(二〇〇二)には汐留地区の街開きがあった。汐留地区はJR新橋駅に近接する旧国鉄汐留貨物駅跡地からJR浜松町駅付近まで広がる施行面積約30・7haの地区を指す。東京都は平成四年に土地区画整理事業、(都市再開発法に基づく)再開発地区計画、補助第三号線等の都市計画を決定した。土地区画整理事業により都市基盤を整備し、業務、商業、文化、居住など複合都市の創出を目指し、東京都と民間が一体となり開発に取り組んだ。他方で、この地域は関東大震災後の復興区画整理事業によって規模が小さい街区が形成されており、老朽建築物が多い新橋駅周辺の再整備や居住者に配慮した環境づくりの推進が求められた。
そこで港区は、活力・魅力を維持・向上させたまちづくりを行うために、「港区まちづくりマスタープラン」(平成一九年)を策定し、地域特性に応じた土地利用の誘導を推進した。新橋・浜松町地域では多様な商業業務機能の集積による活力とにぎわいのあるまちづくりを推進し、新橋駅周辺等では老朽建築物の更新と共に、地域に求められる公共施設や都市機能などを一体的に再編整備し、拠点機能を向上させることとした。さらに、芝地区と麻布地区および赤坂地区にまたがる六本木・虎ノ門地区では、平成二四年に「六本木・虎ノ門地区まちづくりガイドライン」を策定した。都市機能の更新に合わせて生活環境をさらに向上させ、環境への配慮やバリアフリー化、安全安心の強化など先進的な取組を推進した。
環状第二号線の道路整備を実現するため、平成一〇年に、環状第二号線新橋・虎ノ門地区第二種市街地再開発事業が都市計画決定され、同一四年には事業計画が決定し、この地区の再開発が進められることとなった。
港区は、平成二四年には、「環状二号線周辺地区まちづくりガイドライン」を策定し、環状第二号線の道路整備に合わせて沿道の街の機能を更新させるまちづくりを進めることとした。
平成二六年になると、環状第二号線(新橋―虎ノ門)が開通した。また同年、前述の第二種市街地再開発事業で整備していた虎ノ門ヒルズが完成した。これを受け、「新虎通りエリアマネジメント協議会」が平成二六年に発足した。新虎通りとは環状第二号線(新橋―虎ノ門)地上部道路の愛称である。この協議会は、(環状第二号線の部分区間である)新虎通りやその沿道を魅力的で持続可能なまちへ導き、その空間を用いてまちの価値の向上を目指すエリアマネジメント等について企画・検討・活動を行うことを目的として創設されたものであり、オープンカフェの設置などが実現した。なお、新虎通りは、平成三一年に国家戦略特別区域(国家戦略道路占用事業)に認定された。
港区は、平成二九年にまちづくりマスタープランを改定し、環状第二号線周辺地域では、道路の開通を契機とした周辺のまちの変化に合わせ、沿道の街区再編による統一感ある街並みの形成とにぎわいの創出を推進した。また、環状第二号線や令和二年(二〇二〇)に開業した地下鉄新駅(虎ノ門ヒルズ駅)、BRT(専用道を走るバス高速輸送システム)等を軸にした多様な交通手段を連携させ、総合的で階層的な交通ネットワークの構築を目指した。さらに、環状第二号線の整備によって、生活環境が変化した地域に対しては、界隈性ある街並みの形成と地域コミュニティの強化を図り、高齢者をはじめとした様々な人が住み続けられるまちづくりを進めた。
図7-5-2-1 環状第2号線全体図
「東京都市計画道路 環状第2号線 事業概要・整備状況」パンフレット(東京都第一建設事務所 環二工事課、令和4年度)から転載、一部改変
景観については、老朽建築物の建て替えなどまちの機能の更新に合わせて、にぎわいと親しみが感じられる街並みを目指した。平成九年には、港区の目指すべき景観形成の目標と方針を示した「港区景観マスタープラン」が策定された。さらにまちづくりマスタープランを平成一九年に改定し、港区を代表する景観を創造するため、芝公園周辺一帯の街区を、東京タワー、増上寺、愛宕山などを核とし、港区を代表する景観を創出する場とした。加えて、地形の特徴や地域資源等を生かした景観の形成を目指し、増上寺周辺の綱の手引き坂周辺など、豊かな緑と歴史的文化的な環境を持つ地域では、周辺の街並みに配慮した景観形成を推進した。芝公園や旧芝離宮恩賜庭園周辺においては庭園等からの眺望を保全し、港区の歴史・文化・自然等を感じられる質の高い景観の形成を目指した。さらにまちの個性を感じる魅力ある街並みの形成を目指し、増上寺等の歴史文化資源や東京タワーを核とした景観の保全形成を図るため、特に首都東京を象徴するランドマークである東京タワーについては全景が望める眺望点の保全など、遠景・中景・近景それぞれの観点からその眺望の保全形成を図ることとした。大門通りや三田通り周辺においては、東京タワーへの見通しに配慮した魅力的な街並みを育成した。さらに、環状第二号線周辺においては、東京の顔となるシンボルストリートにふさわしい品格とにぎわいのある歩いて楽しい街並みの創出を推進した。
他方で、環境に配慮したまちづくりを目指し、この地域の大規模な開発の際には、緑化基準を強化し、緑の再生や創出を図ることとした。芝公園などの整備により身近な緑地空間の充実、愛宕山、芝離宮、芝公園などの緑の拠点のネットワークを進めるとともに、古川に接した緑の散歩みちの整備を目指した。
【芝、三田(一~三丁目)周辺】 二〇〇〇年代初め、芝・三田地区は、業務・商業を中心とした地区であったが、一部の場所では職場と一体となった住宅が混在した下町的な市街地が形成されていた。「港区まちづくりマスタープラン」(平成一九年)では、業務・商業機能と下町的な職住一体型の活気ある住機能が共存でき、居住と都市活動の均衡がとれたまちづくりを目指すとしている。具体的には、芝二丁目を中心とした商店と住宅が共存した地域では、居住環境と商業・業務機能が調和した土地利用を誘導した。また、三田地域内の大規模開発に関しては、周辺環境との調和を図るとともに、地域に貢献する施設の誘導などによる多様な機能が共存できるまちづくりを進めた。さらに三田地域の大使館等周辺では、緑豊かで個性ある良好なまちが形成されていたことから、こうした個性が持続するまちづくりを目指した。さらに、三田一~二丁目では緑と水の豊かな環境と歴史的文化的な落ち着きのある街並みを保全し、良好な居住環境の形成を目指した。
田町駅周辺については、平成二五年に「田町駅西口・札ノ辻交差点周辺まちづくりガイドライン」を策定した。これにより、札の辻交差点周辺地域については、交差点周辺の開発事業等の機運や駅周辺の今後の建て替え等の機運を捉えて、計画的に既存市街地の機能を更新し、地区内の区有地を有効に活用することとした。
この地域の景観については、大使館周辺の特性を生かす景観を形成するため、都市計画道路補助第七号線の整備に合わせて、緑豊かで風格ある沿道景観の誘導を推進した。
図7-5-2-2 三田2丁目オーストラリア大使館前の日向坂(平成15年)