麻布・六本木地区

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【麻布周辺(南麻布〈三~五丁目〉、元麻布〈二~三丁目〉、西麻布)】 麻布地区には港区に所在する大使館の約六割が立地し、外資系企業も集積していることから、外国人居住者や海外からの旅行者が多く、まちの個性を作り上げ、国際色豊かなまちとなっている。
麻布周辺は、地区の南側には元麻布などの低層建築物を中心とした良好な住宅地や、麻布十番や東麻布など古くから続く商店街などが広がり、落ち着いた市街地を形成している。高台には良好な住宅地が形成されており、低地部には地域に密着した工場や商業を中心とした街並みが広がっていた。しかし、他方で、西麻布地域には基盤整備が遅れ、都市型水害が懸念されているところも残っており、災害に強いまちづくりを進めていく必要もあった。
そこで麻布地域では、有栖川宮記念公園周辺などに広がる住宅地では落ち着きのある街並みを保全し、安全安心で快適な居住環境と商業・業務・交流機能が調和した土地利用を誘導し、多くの人が集うまちづくりを推進した。
道路・交通に関しては、西麻布地域の細街路の改善など、生活道路の促進を進め身近な道路の整備を推進した。また、大使館周辺などの緑豊かな環境を生かすため、街路樹の充実や歩道の拡幅などを行い、快適な歩行空間の形成を図った。
防災については、西麻布地域における細街路の整備や建物の不燃化を促進した。さらに、都市型水害対策を推進するために、南麻布一丁目・二丁目・三丁目における雨水貯留菅の整備や古川の地下調整池や老朽化護岸改修を行った。また、マンションを中心とした建物の老朽化の実態を把握し、建て替え等を促進した。
区民一人当たりの公園等面積の増加に向け、南麻布の有栖川宮記念公園などを拠点とした緑を生かすとともに、開発事業等の機会を捉えて、質の高い緑豊かなオープンスペースの保全や創出をするとともに、屋上緑化や壁面緑化など敷地内を立体的に活用した緑化等を推進した。
生物多様性の供給地である有栖川宮記念公園については、生き物の生息・生育環境に配慮した生物多様性に資する自然回復の場づくりを目指した。古川沿いでは、水質改善や生き物の生息に配慮した護岸整備を推進し、開発事業等の機会を捉えて、親水性の向上により水辺空間の連続化を図り、水の軸を形成することとした。
【六本木周辺(麻布狸穴町、麻布永坂町、南麻布〈一~二丁目〉、元麻布〈一~二丁目〉、麻布台、六本木、麻布十番、東麻布)】 六本木周辺の地域は、日本有数の国際的二四時間業務・商業地である六本木があり、その周辺には閑静な環境に恵まれた住宅地や、にぎわいのある飲食店店舗などが存在し、歴史文化的な風情が感じられる街並みも残されていた。他方で、細街路地区も残っていた。
六本木周辺では一九九〇年代半ばから再開発計画が始まっている。具体的には六本木一丁目西地区再開発(泉ガーデン)がある。東京都は、平成六年四月に「六本木一丁目西地区再開発地区計画」を都市計画決定した。この地区計画は、平成元年に策定された「六本木・虎ノ門地区地区更新計画(案)」(大街区のまちづくりの方針)や「六本木・虎ノ門地区計画」、六本木一丁目西地区再開発基本計画策定調査が示した方向性に基づいたものであった。この地区の再開発の背景には、この地区の土地利用では、敷地が細分化されており、老朽化した木造建築物が存在し地区幹線道路に面しているにもかかわらず、歩道が未整備であり安全な歩行者環境が整備されていない状況にあったこともある。その後、平成一六年には、泉ガーデンを中心とした再開発が完了した。
このほか、一九九〇年代から二〇〇〇年にかけて六本木六丁目地区では、森ビルが、この地区に本社ビルの建設を検討していたテレビ朝日とともに、再開発に向けて、地域住民との協議を重ね、平成二年に六本木六丁目地区再開発準備組合を設立した。平成七年一月に起こった阪神・淡路大震災を受け、構造・防災面の見直しを行い、逃げ込めるまちというコンセプトも加え、同年四月に六本木六丁目地区第一種市街地再開発が都市計画決定された後、同一〇年に事業認可を受け、同一五年に、回遊性をイメージした六本木ヒルズを中心に再開発が完了した(「森ビル 建築から都市へ」平成二四年)。
また、平成一八年には、六本木一丁目南地区の第一種市街地再開発事業の都市計画決定がなされ、同二六年八月にパークコート六本木ヒルトップを中心に再開発が完了した。このほか、六本木三丁目地区は平成一八年に都市計画決定を受け、The Roppongi Tokyoを中心として再開発が同二六年に完了し、六本木三丁目東地区は、同二三年に都市計画決定を受け、六本木グランドタワーを中心として再開発が令和二年に完了した。
こうした六本木地域を中心とした大規模な再開発によって、老朽建物の建て替え等がなされ、歩行環境の向上、道路周辺の公開空地の創出により緑が増えるとともに、統一感のある街並みの色などにより、地区の魅力の向上が図られた。
六本木・虎ノ門地区では、地域の特色である起伏に富んだ地形に配慮しながら、開発事業等の機会を捉えて、生活環境をさらに向上させるためのバリアフリーネットワークの整備や円滑な自動車交通を実現する道路の再編整備を行うなど、安全で快適な自動車・歩行者ネットワークの形成が進められた。さらに、耐火建築物の整備・道路の拡幅による防災機能の向上を図った。再開発により、外資系企業の集積など商業・業務機能の立地が進むとともに美術館などの文化芸術施設も多いことから東京を代表する観光スポットとして日々にぎわうこととなった。
住宅と都市型産業が混在している南麻布一~二丁目については、双方の調和を図りつつ長期的には良好な住環境の形成を目指した。
道路・交通については、補助第七号線の計画的な整備の推進と、補助第四号線の早期整備に係る調整を図ることとした(図7-5-2-5)。都市計画道路の整備に合わせた土地誘導として、外苑東通り、補助第七号線の整備に合わせて道路と沿道とが調和を図った。
景観については、東洋英和女学院や国際文化会館など歴史的な近代建築物のある鳥居坂周辺など、趣がある景観の継承に努めた。また、美しい六本木交差点を創出するために首都高速道路の外観美化(外壁の工夫)などに向けて関係機関との調整を行った。加えて、六本木通りや外苑東通りにおいて街路樹等を整備し、来街者のアメニティを考慮した道路空間の形成を目指した。そのほか、地域特性に応じた景観を保全し、創出するために、桜田通り、六本木通り、外苑東通り、外堀通りなどに囲まれた六本木・虎ノ門の区域の中で高台の尾根を通る道路沿道では、大使館や博物館の文化施設が立ち並ぶ良好な都市空間の保全・向上を図った。
加えて、環境に配慮し、古川への親水性、アクセス性の向上、古川の再生、緑の保全と創出、ヒートアイランド対策の推進を行った。

図 7-5-2-5 補助第7号線の位置図

国土地理院地図から作成