港区は都市化の波が一段と厳しく、緑を代表とする自然環境の保全が重要な課題であった。昭和四八年(一九七三)四月、緑化対策推進本部を設置し、区の基本的な考えをまとめ、よりきめ細かな緑化施策を進めた。昭和四九年、環境課に緑化対策係が設置され、同年に区民が豊かなみどりのもたらす恩恵を享受し、快適な生活を営むことができる環境の実現に資することを目的とする「港区みどりを守る条例」を制定した。同条例では、みどりの保全および創出に果たす、区長、区民および事業者の責務を定めた。これを契機に、保護樹木・樹林の制度化、公共施設の緑化や民間施設の緑化指導、各種緑化施策を行い、区民の取組として、管理・所有する土地について区域を定めて全員の合意により植樹、生け垣の造成等緑化に関する基準を結ぶ緑化協定制度や、緑化に関する情報提供および普及者を区長が委嘱する緑化協力員制度を設けた。
加えて、同条例に基づき昭和五七年に「港区緑化基本方針」をいち早く策定した。こうした取組の中で、昭和四八年に港区みどりの第一次実態調査が実施された。条例策定に伴い、概ね五年ごとに区内の樹木や緑地等の緑と、湧水等の自然の水の実態等の緑被の状況についての実態調査を行い、公表することとされた。その後、緑被地(樹木被覆地・草地・屋上緑地)については、区域面積に占める割合を示す施策の基準となる緑被率が昭和五四年の第二次調査から算定された。その後も、同六〇年、平成二年(一九九〇)、同七年、同一三年、同一八年、同二三年、同二八年にも調査が実施された。
同条例に基づく公共施設と民間施設の緑化は、公共建築物を区の定める緑化基準に従うことに加え、一定面積(昭和五四年以降660㎡、平成二年以降500㎡、平成一五年一二月一日以降は250㎡)以上の建築計画(増築を含む)の建築等を行う際は、民間事業者にも緑化計画書の提出を昭和五四年から義務付けた。なお、東京都では、建築等の際に行う緑化計画書の届出および緑化完了書の届出は、敷地面積が1000㎡(国および地方公共団体が有する敷地の場合は、250㎡)以上の規模が対象とされるが、当該届出・指導については、港区に一元化された。