区民に身近な事務のひとつである清掃事業が都から区へ平成一二年四月一日に移管された。従来から行うリサイクル事業とごみの収集・運搬をあわせて行うことにより3Rの推進を進めていくこととなった。また、清掃事業の移管は、広域の地方公共団体と基礎的な地方公共団体という二つの性格を併せ持っていた特別区が基礎的な地方公共団体となる、都区制度改革の象徴であり、長年にわたる自治権拡充運動の成果でもあった。
清掃事業の都から区への移管の議論の歴史は長く、昭和三九年(一九六四)の地方自治法の改正では、ごみの収集・運搬は、法律上特別区の事務とされたが、別に法律の定める日までは都の事務とされた。続く昭和四九年の地方自治法の改正でも、区長公選制や配属職員制度の廃止、保健所の移管など、特別区の権能の拡充が図られた中でも、都の内部的団体としての特別区の性格と並び清掃事業の移管は課題として残った。
昭和五九年に「都区制度検討委員会」が設置され、同六一年二月に特別区制度改革の協議が整うと、その中で一般廃棄物の収集・運搬に関する事務は特別区が行うこととされた。平成二年九月に内閣総理大臣の諮問機関第二二次地方制度調査会から都区制度の改革に関する答申が出された。平成六年九月には、都と特別区の間で「都区制度改革に関するまとめ(協議案)」が合意された、平成九年に都知事が自治大臣に法改正を要請し、同一〇年四月に衆参両院本会議において、特別区制度に関する「地方自治法等の一部を改正する法律」が可決され、五月に公布された。
一般廃棄物の収集・運搬については、各特別区による運営となり、各特別区では、従来から行っていたリサイクル事業と収集・運搬を一体的に行う体制が整えられた。ごみの中間処理については、可燃ごみの焼却施設(当該施設と一体の溶融固化施設およびごみ運搬用パイプライン施設を含む)の整備および管理運営、不燃・粗大ごみの中間処理およびし尿の下水道投入については、平成一二年四月一日に二三区を構成団体とする東京二十三区清掃一部事務組合が設立され、一部事務組合による共同処理が開始された。同日、各特別区および東京二十三区清掃一部事務組合間の必要な調整を行う東京二十三区清掃協議会が設置された。最終処分場の確保については、特別区が責任を負うものの、当面は東京都が設置・管理する新海面処分場を使用することとされた。
港区は、二三区の中で議会の議決から最終決定までが最も早かった。平成一一年三月二六日第五回都区制度改革推進委員会において特別区の共同処理の形態は、地方自治法第二八四条に定める一部事務組合及び同法第二五二条の二に定める協議会とすることが都区合意された。同年七月一五日に清掃事業共同処理準備委員会(特別区長会)において規約原案が決定されると、港区は九月一七日に議会の議決を行い、続く一〇月七日に協議を行い最終決定とした。