東京では、都市化により地表面がコンクリート等に覆われる割合が高まったことにより、雨が地面に浸透する割合が低くなり、下水道や河川を経由して海に流れ込む割合が高い。港区は東京都の中でも特にその割合が高い地域である。そのため、集中豪雨時には河川の氾濫、下水からの逆流による冠水が起きる、いわゆる都市型水害への対策が必要となっている。東京都はこれらの課題に対処するため、循環型社会づくりの推進の観点から、平成一一年に水循環マスタープランを策定した。港区でも、東京都の水循環マスタープランとの整合性をとりつつ、平成一四年に「港区水循環マスタープラン」が策定された。マスタープランの策定により、これまで各部局が個別に進めてきた、まちづくりや建築計画、環境保全、緑化、防災など、水に関わる諸施策を水循環系の観点から捉え直して体系化が行われた(港区 二〇〇二a、二〇〇二b)。
港区水循環マスタープランでは、「みず・ひと・まちが織りなすうるおい空間みなと」という基本理念が定められ、①水循環の保全、②水辺の潤いの再生、③浸水・大規模災害時の安全度向上、④水のパートナーシップづくりの四つの基本方針が立てられた。基本理念と基本方針の達成に向けて、雨水貯留施設の重点整備や、雨水利用施設設置が推進された。また、ビオトープ(生き物の生活空間)の整備や、渋谷区と連携した古川の治水対策、運河沿い緑地のネットワーク化などの施策も進められ、親水空間の整備が行われた(同上 二〇〇二b)。なお、水循環マスタープランは、緑と水の総合計画(平成二三年)に統合された。