景観の保護

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まちの景観は重要な生活環境の一部である。港区では国の景観行政に先駆けて、早くから景観の保護に取り組んでいる。平成九年(一九九七)には「港区景観マスタープラン」を策定、同一四年には「港区都市景観づくり要綱」を定め、景観の保護に積極的に関与する取組を進めてきた(東京都港区 二〇一五)。平成一六年には国の景観法が公布され、それまで各自治体がそれぞれの条例に基づいて実施していた景観行政を、法的根拠に基づいて実施することが可能になった。従来の景観条例では、法的根拠がないため、最終的に行政訴訟に持ち込まれると、行政側が勝訴する可能性は大きくなかった(平野 二〇〇七)。景観法により法的根拠が与えられたことで、実効性の高い景観行政を実施することが可能になった。港区のように先進的に景観保護に取り組んでいる自治体の活動に、国が後追いで法的根拠を与える形で、景観保護が進展したといえよう。こうした国の動きを踏まえ、平成一九年には東京都が「東京都景観計画」を策定し、同二一年に「港区景観計画」が策定されるに至った。
景観計画の策定により、法的根拠に裏打ちされた形で、建築物・工作物や屋外広告物の配置、高さ、色彩等に関する基準が定められることとなり、まちの魅力をより高める良好な景観形成が進んだ。特に港区の骨格となるような地区・施設については、景観形成特別地区・景観重要公共施設が定められた。景観形成特別地区とされたのは、青山通り、三田通り、大門通り、プラチナ通り、有栖川宮記念公園、芝公園、神宮外苑銀杏並木、環状二号線、浜離宮・芝離宮庭園の九地区周辺と、水辺景観形成特別地区と呼ばれる運河沿い・海辺・台場周辺の地区である。さらに、平成二七年の計画改定で、外濠周辺、品川駅・新駅(現在の高輪ゲートウェイ駅)周辺の二地区が加わった。
港区の景観は、都心部としては貴重な緑地と水辺の空間が特徴的である。今後の景観形成の基本方針の第一としても、水と緑のネットワークの強化が掲げられており、古川の水質改善や、運河とまちが一体となった水辺景観の再生、臨海部の開放感ある海辺景観の創出などに取り組んでいる。また、自然景観の他にも、旧芝離宮恩賜庭園、増上寺のような歴史・文化資源や、青山通りのような道路沿いの街並み、六本木交差点、品川駅周辺、東京タワーからの眺望など、港区には多様で特色ある景観が数多く存在する。こうした港区の魅力ある景観を維持・発展させていく上で、景観行政は重要な役割を果たしているのである。

図8-3-2-1 景観形成特別地区の位置および区域図

「港区景観計画」(平成27年度改定)から転載