生物多様性の保全

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生物多様性(Biodiversity)とは、三つのレベルの多様性を指す概念である。一般的にイメージされやすいのは、生き物の「種」の多様性であるが、その他に、生き物が暮らす「生態系」の多様性や、それぞれの種の中の「遺伝子」の多様性も含まれる用語である。我々の日常生活は、様々な形で自然の恵みに支えられている。農作物などの食料全般がそうであるが、中でも魚介類やキノコなどは自然のめぐみの代表といってよいだろう。食料に限らず、植物によるCO2の吸収や、森林による土壌保全・土砂災害の防止など、目につきにくいところでも様々な恩恵がもたらされている。こうした自然のめぐみは「生態系サービス」とも呼ばれ、生物多様性と密接な関係があることが知られている(橋本 二〇一四)。
生物多様性の保全に関する国際的な問題意識の高まりを受けて、国は平成二〇年(二〇〇八)に「生物多様性基本法」を制定した。生物多様性基本法では、地方自治体に対して生物多様性地域戦略の策定が努力義務とされ、自治体レベルでの自然環境保全の取組が求められる時代となった。
港区では、従来から生きものと共生できる街づくりを進めるため、昭和五九年(一九八四)に「港区自然環境保全基礎調査」(港区 一九八五)、平成元年に「港区生物現況調査」、同二〇~二一年に「港区生物現況調査(第二次)」を実施し(同上 二〇一〇)、自然環境の保全に取り組んできた。こうした調査等を踏まえて、港区内の生物多様性の保全・再生を目的に、平成二六年に「港区生物多様性地域戦略――生物多様性みなとプラン」を策定している。生物多様性地域戦略を策定している市区町村は全国でも数少なく、政令市を除くとわずか七七市区町村(平成三〇年度末時点)である(環境省 二〇一九)。港区は全国的にみても自然環境保全に熱心な自治体であるといえよう。