港区は東京二三区の中でも比較的緑の多い街である。土地面積のうち緑で被われた面積の割合を示す緑被率で見ると、港区の緑被率は21・78%、東京二三区の中でも四位である(平成二八年「港区みどりの実態調査(第九次)」)。港区では、市民への普及・啓発活動や、生物多様性に配慮した生活の促進、ビオトープの創出・維持管理、外来種の防止、企業やNPOとの連携など、自然や生きものと共存できるまちづくりを進めるため、様々な取組が進められている。
なかでも、企業を巻き込んだ活動に積極的に取り組んでいる点は、港区の特徴がよく表れている。港区では、生物多様性みなとネットワーク会員の事業者とともに事業者向けの「生物多様性行動メニューリスト」を作成し、普及啓発に努めている。行動メニューリストの普及を通じて、事業者の立場からどのように生物多様性の保全に関わっていくことができるかという情報が浸透し、多様な主体を巻き込んだ保全活動の進展が期待される(港区 二〇二一)。
自然環境保全、生物多様性への関心は、近年高まりつつあるが、営利事業を行っている民間企業にとって、環境問題への対応はコストとして認識されてしまう側面があることは否めない。民間企業を巻き込んだ生物多様性保全の取組を、進めることができている自治体は全国的に見てもごくわずかであり、港区の先進的な取組に注目が集まっている。 (小田勇樹)