〔第二項 国内産業の今後の課題〕

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一九六〇年代から七〇年代にかけ、日本は、当時としては世界的にも先進的なICT(情報通信技術)の利用がみられ、これらがまたICT産業の発展にもつながっていった。また、一九七〇年代から八〇年代にかけては、「電子立国」とも称されたとおり、ICT産業の中でも製造業(以下「ICT関連製造業」という)は、自動車産業と並んで日本経済を主導する産業であった。しかし、一九九〇年代以降は、インターネットの登場やモバイル技術の発展によりICTがさらに大きな可能性をもたらすようになった中で、日本では、バブル崩壊に伴い情報化投資額は減少し、諸外国と比較してICTの利用による経済成長への貢献も低い水準に留まり、特に二〇〇〇年代以降はICT関連製造業もかつての存在感を失っていった(図10-1-2-1)。図10-1-2-2のように、平成九年(一九九七)をピークとして、ICT利用産業の情報化投資額(名目)は減少傾向となっている。日本の経済のデフレやハードウェアの性能向上による価格低下という要因は踏まえる必要があるものの、日本の「産業の情報化」は平成時代においてほぼ停滞したといえる(総務省編 二〇一九)。今後、各産業のさらなる情報化の推進が求められている。産業だけでなく、コロナ禍を経て自治体のICT化も急務となっている。
各産業の国際競争力をみても、一九九〇年代以降勃興してきたIT、バイオのようなサイエンス型産業において、我が国は強い国際競争力を保持しているとはいえない。例えば米国に対して医薬品やソフトウェアが輸入超過状態であるなど、米国に大きく後れを取っている。また、サービス分野においても、ITサービスの成長率が米国、欧州に比べても低い状況にあるだけでなく、欧米諸国に比べて低い生産性や国際展開の乏しさといった問題点が指摘される(文部科学省「科学技術・イノベーション政策の展開にあたっての課題等に関する懇談会」資料)。
このほか、女性の社会進出、高齢者の働きやすい環境づくり、医療や福祉分野などの産業振興、環境やエネルギー問題への対応、外国人労働者の労働環境整備といった、産業関係でも様々な問題への対応が求められている。

図 10-1-2-1 我が国における ICT 利用産業の情報化投資額(名目)の推移
総務省編「令和元年版 情報通信白書」から転載。出典は内閣府国民経済計算

図 10-1-2-2 我が国における業種別情報化投資額(名目)の推移
総務省編「令和元年版 情報通信白書」から転載。出典は内閣府国民経済計算