二つ目は、合理化と近代化支援である。港区では、中小企業の経営の合理化、近代化を支援した。港区の主要産品は、電気機械器具をはじめとし、食料品、出版、印刷、金属製品があったが、家具、装飾品類は伝統を持ち、軽工業の主力となっていた。これらの中には、下請負を業とする小資本の零細企業も多く、技術革新のなかで経営の合理化、近代化が要求されていた。そのため、港区は、これらを専門とする相談員に委嘱し、来所または出張相談による面接相談、あるいは、書面や電話による通信相談により、企業経営のあらゆる部面にわたる相談に応じた。各専門家に依頼して経営の合理化、陳列、照明、店舗の改造等について診断を行う商店の総合診断、工場の経営、経理、生産工程、材料仕入れ、販売等についての工業診断経営講座、技術の指導を行い、企業の体質改善に努めた。また、「商工フィルムライブラリー」を設置し、視聴覚訓練用の一六ミリ映画、スライドのフィルムを常時貸出した。
三つ目は雇用促進・定住支援である。中小企業の従業員は昭和三八年(一九六三)をピークとして伸び悩んでいた(図10-3-2-2)。中小企業にとっては、若年労働者の求人難の深刻化は、大きな悩みであるだけでなく、企業の存廃にも影響するため、雇用促進・定着対策が必要であった。そこで、一九六〇年代後半からは、港区では、雇用促進・定住対策などを積極的に行った。職業安定所とも十分な連係を保ち、清新な労働力の確保を図り、既就労従業員の定着対策としては、適切な指導を行うほか、慰安会、激励会、表彰を行った。また、中小企業従業者の福祉施設として勤労青少年ホールを建設し、その慰安娯楽、教育の向上に努めた。このほか産業振興のために施設(後の港区立商工会館)の建設を推進した。
図10-3-2-1 港区中小企業期末融資状況
「港区勢要覧」「港区要覧」「今日の港区」各年版から作成
図10-3-2-2 港区中小企業従業員数の推移
「今日の港区」昭和48年版から作成