〔第二項 中小企業支援〕

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一九五〇年代後半から六〇年代の高度成長期の中小企業支援の特徴は、三つみられる。一つ目は、商業振興と資金支援である。商業振興では港区生産品展示即売会、商業まつり、商店コンクール、産業展などを実施した。また、中小企業者の金融難緩和のため昭和二八年度から実施した融資事業は、中小企業系統金融機関の自己資金による協力を得て、中小企業の好評を博したとされる。昭和三四年度からは常時融資の制度を新設し、資金制度の拡充強化を図り中小商工業者の要望に応えた。融資額の状況は図10-3-2-1のとおりであり、一九六〇年代(昭和三五~四四)には、期末融資(年末融資)では、一億円程度の融資をしている。
二つ目は、合理化と近代化支援である。港区では、中小企業の経営の合理化、近代化を支援した。港区の主要産品は、電気機械器具をはじめとし、食料品、出版、印刷、金属製品があったが、家具、装飾品類は伝統を持ち、軽工業の主力となっていた。これらの中には、下請負を業とする小資本の零細企業も多く、技術革新のなかで経営の合理化、近代化が要求されていた。そのため、港区は、これらを専門とする相談員に委嘱し、来所または出張相談による面接相談、あるいは、書面や電話による通信相談により、企業経営のあらゆる部面にわたる相談に応じた。各専門家に依頼して経営の合理化、陳列、照明、店舗の改造等について診断を行う商店の総合診断、工場の経営、経理、生産工程、材料仕入れ、販売等についての工業診断経営講座、技術の指導を行い、企業の体質改善に努めた。また、「商工フィルムライブラリー」を設置し、視聴覚訓練用の一六ミリ映画、スライドのフィルムを常時貸出した。
三つ目は雇用促進・定住支援である。中小企業の従業員は昭和三八年(一九六三)をピークとして伸び悩んでいた(図10-3-2-2)。中小企業にとっては、若年労働者の求人難の深刻化は、大きな悩みであるだけでなく、企業の存廃にも影響するため、雇用促進・定着対策が必要であった。そこで、一九六〇年代後半からは、港区では、雇用促進・定住対策などを積極的に行った。職業安定所とも十分な連係を保ち、清新な労働力の確保を図り、既就労従業員の定着対策としては、適切な指導を行うほか、慰安会、激励会、表彰を行った。また、中小企業従業者の福祉施設として勤労青少年ホールを建設し、その慰安娯楽、教育の向上に努めた。このほか産業振興のために施設(後の港区立商工会館)の建設を推進した。

図10-3-2-1 港区中小企業期末融資状況

「港区勢要覧」「港区要覧」「今日の港区」各年版から作成

図10-3-2-2 港区中小企業従業員数の推移

「今日の港区」昭和48年版から作成