〔第三項 消費者保護行政と消費者の取組〕

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消費者生活を安定させるためには、流通機構の整備などにより物価の上昇を抑制する必要があるが、国による政策が中心となる。そこで、港区では消費者保護行政として、オイルショックの影響による異常な物価高に対応した施策として、鮮魚のお買い得品の推せん事業や食肉等を販売する産地直送販売事業の推進などを行う「生活物資の安定供給」、消費者教室等の推進、消費生活情報の提供や消費者相談の充実を図る「消費者保護の充実」、品質検査の実施などを行う「消費者生活環境の改善」を柱に施策を実施した。具体的には、消費者を保護し、消費生活の向上を図るために、次のような取組を行った。第一に、消費者教育の推進として、「消費者教室」があった。これは、区内の消費者を対象とした、専門家による消費生活に関する講座であり、消費者が生活に必要な知識、情報または技術を得ることで、消費生活の合理化および意識の向上を図った。また、生産地、工場など消費生活に関わる施設を見学し、現地で懇談する「生産施設見学」がなされた。第二に、消費者生活相談の充実が図られた。例えば、消費生活上の苦情や疑問等に対して専門の相談員が共に考え解決の手伝いをする「消費生活相談」があった。消費者生活相談件数は表10-4-3-1のとおりで毎年増加している。
また、相談の内容は比率が高い順に契約(解約)の28%、品質・機能の20%、接客対応と買物相談の12%であった(図10-4-3-1)。

表10-4-3-1 消費生活相談件数

「みなと区政要覧」昭和58年版・同60年版から作成

図10-4-3-1 昭和60年度の内容観点別相談比率

「事業概要」(港区区民部商工課)昭和61年度版から作成。1%未満の項目は「その他」に含めた


第三に、消費者モニターの実施であった。これは、区内在住の消費者が、食料品を中心に生活必需品の小売価格を調査した。その結果は、消費者行政の基本資料として役立てつつ、調査活動を通じて調査員自身の消費者意識の向上を目的とした。調査品の種類は、野菜、果物、鮮魚、肉類、精米、日用食品、灯油と多岐に及び、昭和五八~六〇年には毎年三二品目を調査した。第四に消費者生活情報の提供であった。「ミナト消費者だより」「消費者ハンドブック」の発行や「広報みなと」の特集等を通して、区民に対して、消費生活上の知識・情報を提供し、区内の消費者活動や区の事業等を紹介、案内した。なお、「ミナト消費者だより」とは、「消費者保護基本法」が制定された昭和四三年に創刊され、区の消費者行政事業の報告や消費生活相談事例の紹介、当時話題になった消費生活上の事柄をわかりやすく解説し、消費者問題への関心を深めてもらうための冊子であった。
以上は区による取組であるが、消費者自身の自発的活動も進んでいった。第一に、「消費者コーナー」があった。昭和五五年四月に区立婦人会館の一角に誕生した同コーナーは、区内の消費者が気軽に立ち寄り、自由に語り合う広場であり、自主的に活動する拠点となった。こうした活動の背景には、多様化し複雑になった消費生活の中で、消費者が自らの権利を守り安全に暮らすため、消費者自身が勉強し、手を携えて活動することが必要であるという認識があった。活動は、主として区民参加による「消費者コーナー委員会」によって進められ、活動内容は、商品テスト、パネルの展示、「コーナーだより」での啓発等であった。第二に、区内の消費者グループ等が区と協力して、日頃の自主的な活動の中で調査、研究した成果を発表する「消費生活展」があった。第三に、消費者団体の育成も見られた。例えば、現在または将来の消費生活に関わるテーマについて消費者問題の先端的状況の現場を訪れ、現地での宿泊研修および関係者との懇談等を通じて認識を深め、活動に反映することを目指す「消費者リーダー研修会」、国内の消費者グループの自主的な研修会に講師を派遣またはあっせんする「消費者団体研修会」などがあった。第四に、不用品の利活用も進んだ。例えば、地区不用品販売会であり、これは生活物資の再活用を図るとともに、共催する消費者団体の育成を目指した。昭和四九年度から年一回全区的な規模で実施されていたが、同五三年度からは地区別に年四回実施された。  (三田妃路佳)