港区は都心区として、中枢管理機能が多数集中しており、多くの業種の事業所が分布していた。
工業については、軽工業が多く、なかでも、地域に密着した地域産業・伝統工芸産業や印刷関連業種を中心とする都心型工業が発展していた。『港区工業実態調査報告書』(昭和六三年)によると、軽工業加工型が主力で出版印刷同関連産業の事業所占有率が極めて高く全体の43・4%であった。これに次いでその他の製造業の11・8%、金属製品製造業の9・2%であった。地域的な特徴としては、港湾地帯には製造業、運輸・通信業の工場や倉庫が集積しており、他方、古川地域は小規模工場が立地していた。
商業については、図10-1-3-1(前掲)や図10-5-1-1でも示すように、区内全事業所の約半数を占めており、港区の産業の中心であった。一九六〇年代後半からは産業全体の中で、卸売・小売・飲食が一位ではあるが、サービス業が成長した。商業(商店)の中では、卸売・小売・飲食業がそれぞれ三分の一を占めていた。
一九八〇年代後半から九〇年代初めの港区におけるサービス業の特徴は、表10-5-1-1のように、情報サービス業、専門サービス業、法律事務所、特許事務所、司法書士事務所、公認会計士事務所、税理士事務所などのその他の事業サービス業が多いことである。また、情報サービス・調査・広告業、その他の事業サービス業は昭和六一年から平成三年の五年間に30%以上の伸びを示した。映像業の集積も高く、放送業と共に五年間に事業所数が増加した。このほか、政治・経済·文化団体、学術研究機関などの集積度も高く、特に学術研究機関は五年間に30%以上増加した。他方で、駐車場業、自動車整備業、保健衛生に関連した事業所が大きく減少した。

図10-5-1-1 区内上位3産業における事業所数の推移

「東京都統計年鑑」から作成

表10-5-1-1 区内サービス業事業所数
総務省「事業所・企業統計調査」から作成