表10-6-1-2 港区の卸売業・小売業の事業所数
経済産業省「商業統計調査」、総務省「経済センサス」および『第4次港区産業振興プラン策定に係る基礎調査報告書』(2020)から作成。格付不能なものは除く
表10-6-1-3 港区の卸売業・小売業の従業者数
経済産業省「商業統計調査」、総務省「経済センサス」および『第4次港区産業振興プラン策定に係る基礎調査報告書』(2020)から作成。格付不能なものは除く
業種別に事業所数をみると、機械器具の構成比が最も高く、次いでその他卸売業が高い。その他卸売業には、家具・建具・什器や医薬品・化粧品等が含まれる。都市部における医薬品関連の卸売業については、医療費抑制策による仕入れ価格の低下や外資の参入といった経営環境の変化がある一方で、高齢化社会の到来やドラッグストアのような大型小売店の出現といった市場の拡大もみられた。
業種別販売額については、各種商品が最も多く、機械器具が続いた。
その後、卸売業の事業所数をみると、平成二四年から同二六年にかけて最も増加率が高かったのは機械器具卸売業で11・8%であった。また、従業者数も同様に機械器具卸売業で48・0%増加し、約八万五〇〇〇人となった。しかし、平成二八年には卸売業を小分類でみると、同二六年と比較して事業所数はほとんどの業種で減少した。ただし、従業者数は各種商品卸売業で約四〇〇〇人増と大きく増加した。
港区の卸売業の地域の特徴としては、一九九〇年代は虎ノ門・西新橋、新橋、浜松町の各エリアで集積が高く、これらのエリアにおいては機械器具が中心分野であった。また、青山を中心として、六本木・西麻布、赤坂の各エリアでは、衣服関連の卸売の集積が特徴的であった。この他、芝浦・港南では食肉卸売市場があることにより、農畜産物・水産物卸の構成比が高かった。
二〇〇〇年代では、地区別の事業所数は、芝地区、赤坂地区、麻布地区の順で多く、従業者数では芝地区、赤坂地区に次いで、芝浦港南地区が三番目であった。地区別に集積する業種を従業者数ベースでみると、芝浦港南地区は卸売業・小売業、情報通信業、製造業の割合が高かった。
二〇一〇年代の港区の卸売業の年間販売額は、平成二八年で約三九兆円であった。これを平成一九年と比較すると、卸売業は東京都や特別区においてほぼ横ばいの中、港区は約8%増加した(表10-6-1-4)。特に平成二四年から二八年にかけては、他を大きく上回る45%増となっている。
表10-6-1-4 東京都・他区との年間商品販売額の比較(卸売業)
経済産業省「商業統計調査」、総務省「経済センサス」から作成
【小売業】 港区小売業の産業構造全体に占めるシェアをみると、平成三年では、事業所数では10%、従業者数では4%となっていた。また、飲食店は、事業所数では17%、従業者数では8%となっていた。
九〇年代から二〇〇〇年代の小売業の事業所数の推移をみると、平成六年には三五九〇であったが、増加を続け、事業所数は平成一六年の段階では三九五八となった。この時、飲食料品小売業が28・9%と最も多く、織物・衣服・身の回り品小売業(24・8%)と続いた。東京都の他区と比較すると、平成一一年から同一六年にかけては、東京都の特別区全体で事業所数が減少しているのに対し、港区は同数を維持した(表10-6-1-5)。
小売業の従業者数は、平成三年の二万四四三二人から同六年の二万二五〇三人と減少したが、同六年から同一六年では二万八〇五五人まで増加した(表10-6-1-3および表10-6-1-5)。
表10-6-1-5 港区等の小売業の状況
「第2次港区産業振興プラン」(2009)から転載、一部改変。数値の出典は経済産業省「商業統計調査」
年間販売額をみると、平成三年から同六年にかけて大幅に減少したが、同九年には約七一二〇億円と大幅に増加した(図10-6-1-3)。これは、全国的な傾向とは異なるが、港区の場合、臨海副都心開発による影響が大きいと考えられる。しかし、平成一一年は約六四九〇億円となり、従業者数は増加したのに反して、年間販売額は大幅に減少した。
図10-6-1-3 港区の小売業の従業者数および年間販売額の推移
経済産業省「商業統計調査」から作成
二〇一〇年代以降の事業所数全体の推移をみると、平成二四年から同二六年には1・9%増加し、同二八年には減少した。事業所数について業種別にみると、平成二四年から同二六年の間は全体的に増加傾向、その後、同二八年には各種商品卸売業と無店舗小売業を除いて減少傾向となった(港区産業・地域振興支援部産業振興課 二〇二〇)。
従業者数全体については、平成二四年から同二六年には23・9%減少し、同二八年にはさらに減少した。ただし、従業者数を業種別にみると、各種商品小売業、機械器具小売業、無店舗小売業は平成二四年から同二八年で一貫して増加し、特に無店舗小売業は、約二八〇〇人増加した。飲食店小売業は、平成二四年から同二六年には、二〇〇〇人以上の大幅な増加がみられたが、同二八年には増加分とほぼ同数減少した。織物・衣服・身の回り品小売業では平成二四年から同二六年にかけて一万人弱の減少がみられた。
年間商品販売額については、平成二八年は、小売業は約一億円であった。表10-6-1-6のように平成一九年から同二八年までの推移をみると、東京都の小売業は10・5%増加しているが、港区は38・7%と大幅に増加した。周辺区の千代田区(19・1%)と中央区(14・6%)をみても、港区の増加率の高さがよくわかる。
表10-6-1-6 東京都・他区との年間商品販売額の比較(小売業)
経済産業省「商業統計調査」、総務省「経済センサス」から作成
九〇年代から二〇〇〇年代にかけて、港区では中小小売店舗の割合が多い(98%)ことが特徴であった。中央区や新宿区では、大規模店舗の年間販売額が全体の60%を超えているのに対し、港区は16%程度であった。中小小売店舗の一店舗当たりの年間販売額は都心部ほど高くなる傾向があり、港区では、中小小売店舗一店舗当たりの年間販売額は約一億四〇〇〇万円であり、千代田区に次いで高い値であった。
大型小売店については、一つの建物に複数の小売店が出店する寄合百貨店と専門店が約七割と高く、大部分がファッション関連であった。従来は、衣料品や化粧品、雑貨などによって売り場が分かれるケースが多かったが、この頃、これらを総合展開し、ブランドイメージを鮮明に打ち出した大型の路面店がみられるようになった。一方、スーパー、スーパー・食品は二割程度であり、百貨店は僅か2%に過ぎなかった。
しかし、その後の二〇一〇年代の特徴としては、平成二五年当時の港区の大型小売店の店舗数は五八店舗、売場面積は約23万㎡であった。大型小売店は芝浦港南地区に多数立地した(港区 二〇一四)。