サービス業

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港区の産業全体に占めるサービス業のシェアは、平成三年の時点で、事業所数において約35%となっており(前掲図10-1-3-1①)、産業大分類別では、卸売業・小売業に次いで構成比の高い産業である。区内のサービス業の事業所数は、平成三年時点で約一万五〇〇〇、従業者数は約二八万人であり、平成八年時点でもほぼ同水準であった。その後、産業の分類項目が改定されたため単純に比較することはできないが、平成一八年には、事業所数が一万四〇〇〇を割り込み、従業者数も約二一万人に減少していたところ、平成二八年には、事業所数が二万二〇〇〇近くに回復し、従業者数も四〇万人を超えることになった(図10-6-1-4)。この時期、港区内のサービス業は、全体として発展する傾向にあったといえる。

図10-6-1-4 港区のサービス業の事業所数・従業者数の推移

総務省「事業所・企業統計調査」、同「平成24、28年経済センサス(活動調査)」から作成。平成18年は同14年の分類項目改定により「サービス業(他に分類されないもの)」のみを集計


ここで、平成八年時点でのサービス業の状況を整理すると(表10-6-1-7)、事業所数においては、専門サービス業(35・0%)、政治・経済・文化団体(7・8%)、情報サービス・調査業(6・4%)、医療業(6・4%)、映画・ビデオ制作業を除く娯楽業(6・0%)、洗濯・理容・浴場業(5・7%)などが多くなっている(「その他の事業サービス業」を除く)。従業者数においては、専門サービス業(14・4%)、情報サービス・調査業(13・6%)、政治・経済・文化団体(5・1%)、医療業(4・4%)、旅館・その他の宿泊所(4・0%)、映画・ビデオ制作業を除く娯楽業(3・7%)などが多くなっている(「その他の事業サービス業」を除く)。

表10-6-1-7 港区サービス業(中分類)の事業所数と従業者数(平成8年)

総務省「事業所・企業統計調査」から作成


なお、産業の分類区分はたびたび変更されているため、時系列的な推移を正確に追っていくことは難しいが、近年は表10-6-1-8、表10-6-1-9のような区分となっている。そこでまずこれに従って、近年の港区のサービス業の状況を、平成二八年を例にして整理する。
サービス業は、「不動産業、物品賃貸業」「学術研究、専門・技術サービス業」「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業、娯楽業」「教育、学習支援業」「医療、福祉」「複合サービス事業」「サービス業(他に分類されないもの)」に区分されているが、事業所数において、港区で最も多いのが「宿泊業、飲食サービス業」で、サービス業全体の26・7%を占めている。「宿泊業、飲食サービス業」は、宿泊業、飲食店、持ち帰り・配食飲食サービス業に大別されるが、ほとんどは飲食店である。次に多いのは「学術研究、専門・技術サービス業」(21・9%)であり、その内訳は、専門サービス業、技術サービス業、広告業、学術・開発研究機関の順となっている。専門サービス業には、法律事務所、公認会計士事務所、税理士事務所、経営コンサルタントなどが含まれる。次に多いのが「サービス業(他に分類されないもの)」であるが、格付不能なものも含め、多種多様なサービス業がここには含まれている。これに次ぐのが「不動産業、物品賃貸業」(13・6%)であり、その内訳は、不動産賃貸業・管理業、不動産取引業、物品賃貸業の順となっている。
従業者数でみると、「サービス業(他に分類されないもの)」が最も多いが、それに次ぐのが「学術研究、専門・技術サービス業」(20・2%)である。以下は、「宿泊業、飲食サービス業」(20・0%)、「不動産業、物品賃貸業」(9・9%)、「医療、福祉」(8・6%)、「教育、学習支援業」(6・9%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(6・2%)が続いている。
次に、平成二四年と平成二八年とを比較すると、港区のサービス業の事業所数はほとんど変化していないが、従業者数は10%程度増加している(表10-6-1-8、表10-6-1-9)。以下では、港区の主要な業種のうち、平成二四年と平成二八年の従業者数を比較して、増加が顕著なものを取り上げる。
まず、従業者数の増加が最も顕著なのが「教育、学習支援業」であり、平成二四年の約一万六〇〇〇人から平成二八年の約二万八〇〇〇人と約70%も増えている。このうち、学校教育が約90%増、その他の教育、学習支援業が40%増である。次に増加が顕著なのは「医療、福祉」で約45%増となっており、その内訳をみると、保健衛生、社会保険・社会福祉・介護事業は約倍増で、医療業も三割近く増加している。また、「学術研究、専門・技術サービス業」の中の専門サービス業は33%増と顕著な増加を示している。港区のサービス業においては、この間、教育関係、医療・福祉関係、そして専門サービス関係の発展が顕著であったといえる。

表10-6-1-8 港区内のサービス業の民営事業所数

『第4次港区産業振興プラン策定に係る基礎調査報告書』(2020)から転載、一部改変。数値の出典は総務省「平成26年経済センサス(基礎調査)」、同「平成24、28年経済センサス(活動調査)」

表10-6-1-9 港区内のサービス業の従業者数(民営事業所)

『第4次港区産業振興プラン策定に係る基礎調査報告書』(2020)から転載、一部改変。数値の出典は総務省「平成 26 年経済センサス(基礎調査)」、同「平成 24、28 年経済センサス(活動調査)」


港区のサービス業の状況を、全国、そして東京都の状況と比較すると、以下のような特徴がある。サービス業の業種特性については、情報サービス・調査・広告業、その他の事業サービス業、専門サービス業の分野で、全国および二三区平均と比べ相対的に集積が高い。特に、放送・情報サービスやデザイン業、弁護士・会計士など、専門的な技術・ノウハウ・資格・知識や感性、知恵を生かしたサービス業の高い集積がみられた。港区には、民放キー局が集まることもあり、TV番組、映画、音楽等を制作するいわゆるプロダクション機能が多数集積している。
サービス業の地区別の状況としては、事業所数、従業者数ともに、芝地区が最も多く、以下、赤坂地区、麻布地区が続いている。従業者数では、芝地区で港区全体の約半数を占めている。
各地区の特徴をみると、一九九〇年代には、情報サービス・調査業・広告業は芝エリアに、政治・経済・文化団体は虎ノ門・西新橋エリアに、映像製作に関連したサービス業は六本木、西麻布、赤坂エリアに集中している様子がうかがえる。全体には、区の北部には専門サービス等の分野が多いのに対して、区の南部には生活サービス分野が多いという傾向がみられる。二〇〇〇年代以降は、サービス業(他に分類されないもの)については芝地区、次に赤坂地区、学術研究・専門・技術サービス業は芝地区・赤坂地区で多く、宿泊業・飲食サービス業は芝地区、次に麻布地区、生活関連サービス業・娯楽業は芝地区・赤坂地区で多い。