〔第三項 生活保護受給者等への就労支援〕

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生活保護受給者が一九九〇年代後半以降増加し(港区の生活保護受給者数等の推移は図11-2-3-1)、その就労による自立を図ることが重要な課題となるなか、厚生労働省の社会保障審議会福祉部会「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」の最終報告書が平成一六年(二〇〇四)一二月にまとめられた。そこで、「被保護世帯と直接接している地方自治体が、被保護世帯の現状や地域の社会資源を踏まえ、自主性・独自性を生かして自立・就労支援のために活用すべき「自立支援プログラム」を策定し、これに基づいた支援を実施することとすべきである」と提言された。これを受けて厚生労働省から通知が出され、全国の自治体でハローワークと連携した取組が開始され、港区においても平成一七年度から「生活保護受給者等就労支援事業」が行われる。

図11-2-3-1 生活保護の被保護者数と被保護世帯数

各年度3月中の数値。「港区行政資料集」各年版から作成


しかしこの事業は就労意欲のある対象者本人がハローワークに行き支援を受ける必要があったため、実績が乏しくなる傾向があった。平成二三年一二月から「『福祉から就労』支援事業」となり要件が緩和され、本格的に支援が行われることとなった。平成二五年度からは、「生活保護受給者等就労自立促進事業」となり、対象者の拡大・支援内容等の強化が行われた。支援対象者ごとに福祉事務所とハローワークが就労支援チームを設置し連携して支援が実施された。支援メニューは、ナビゲーターによる就労支援、職業準備プログラム、トライアル雇用の活用、公共職業訓練の受講あっせん、求職者支援訓練の活用などである。平成二七年一月には、「生活困窮者自立支援法」に基づいて、港区は生活・就労支援センターを開設するが、そこで自立相談支援、就職準備支援などにあたるほか、ハローワーク品川の常設窓口「みなとジョブスポット」が併設され、一体的に就労支援を実施する体制がより整備された。
以上のハローワークとの共同事業とは別に、港区独自の就労支援事業も始められた。港区では平成一五年、全国で初めてケースワークに委託事業者を配置し、ケースワーカーの補助を委託したが、平成一六年からは就労支援事業について、専門知識を有する就労支援員(委託)による支援が行われることとなった。生活保護受給者等を対象に、求人情報の提供、求職の支援、ハローワークへの同行、履歴書の書き方や面接の指導、その他就労に関わる相談等を専門的に行い、さらに就労経験のない人たちに対して、短期・軽度の就労体験プログラムを実施するというものである。
また平成二五年度には、港区福祉事務所(保健福祉支援部生活福祉調整課)に求人開拓員(委託)を置くとともに無料職業紹介所が設けられた。リーマンショック以降の厳しい雇用情勢のもとで、ハローワークの求人に頼るだけでは就労決定にいたることが難しい場合もあり、生活保護受給者の稼働能力や希望、その他の事情に合致し、また生活保護受給者に対して一定の理解がある求人企業を開拓することで、就労意欲の醸成から雇用の成約にいたる一貫した就労支援の流れを整備する必要があったためである。
ひとり親世帯(その大半は母子世帯)は生活保護を受給するなど、困窮していることが少なくない。港区は都内でも離婚率が高く、ひとり親世帯数が増加してきたところ、母子世帯に対する経済的支援の一つである児童扶養手当が、平成一四年の法律改正によって、支給開始から一定期間を経過した場合に減額されることになった。これに対して港区では、平成一八年度から、ひとり親家庭で児童扶養手当の支給を受けている(または同等の所得水準にある)人等を対象として、産業カウンセラーの資格を有する支援員による「ひとり親家庭就労支援事業」を開始した。就労支援員が、キャリア・カウンセリングの手法で面接を実施し、求職情報、区の制度、ハローワークの制度等の情報を提供し、就労支援を行うというものである。