この商工会館経営者等講習会では、従来からある経営者を対象とした講演会や講習会に加えて、従業員講習会が加わった。従業員講習会では、①新入社員研修会、②複式簿記講座、③中堅社員研修会、④営業部員基礎セミナー等が行われてきた。この事業は、平成七年度(一九九五年度)から、講習会補助事業に組み変わった。平成一三年度からは、①の新入社員対象の講習会のみ実施となり、同一七年度には中小企業人材育成塾に統合された。②の複式簿記講座は勤労者福利文化事業に引き継がれた。
経営者講習会の実績の推移を見ると(表11-3-1-1)、経営者講習会は、昭和五八年度から平成一九年度までは複数回開催され、多い時には延べ五〇〇人を超える参加者がいた。平成二〇年度以降は年一回の開催となり、一五〇~二〇〇人という形で定員数が設定された。この経営者講習会は平成二四年度に終了した。従業員講習会は昭和五九年度から平成一二年度にかけて、年三~四回開催され、多い時には、延べ一〇〇〇人を超える参加者がいた。しかし、平成一三年度から一六年度にかけては、製造業・非製造業別に年一回の開催となり、参加者は延べ一五〇~二五〇人程度となった。従業員講習会は、平成一六年度に終了した。
表11-3-1-1 経営講習会(セミナー)の実績
「商工会館経営者等講習会概要(昭和58年度~平成24年度)」(港区提供資料)から作成
【中小企業人材育成塾】 港区は、平成一六年度から中小企業人材育成塾を開始した。この中小企業人材育成塾は、平成一六年度末で終了した従業員講習会を引き継いだものである。この塾の目的は、新入社員・中堅社員・管理職などの対象に応じた研修を実施し、区内の中小企業の人材を育成し、経営基盤の強化を図ることにある。平成二七年度から令和元年度(二〇一九年度)の事業の実施状況を見ると、新入社員研修、OA研修(Excel、Access、PowerPoint等)、グローバル研修、新技術研修等が行われている。
【中小企業セミナー】 中小企業セミナーは、平成二二年度から行われている。この事業の目的は、経営環境が厳しさを増す中で、区内中小企業の税務や金融、後継者不足等といった悩みを解消することにある。この事業では、セミナーを開催することで、基礎知識の習得および問題解決に向けた情報提供が行われている。平成二七年度から令和元年度にかけての事業の実施状況を見ると、事業継承セミナーや販路拡大セミナー、経営力強化セミナー、働き方改革セミナー等が行われている。
【新規学卒就職者歓迎激励会】 新規学卒就職者歓迎激励会は昭和三九年度に開始された。事業の対象は区内の中小企業に就職した中卒者と高卒者であり、雇用の促進を図ることが目的とされた。この事業は芝園橋公共職業安定所との共催であった。歓迎激励会は歓迎式典と講演会という内容で年一回実施された。なお、この事業は平成七年度に廃止された。
【中小商工業永年勤続優良従業員表彰】 中小商工業永年勤続優良従業員表彰は昭和三六年度に開始された。その目的は、区内中小企業の従業員の定着安定と勤労意欲の向上を図ることにあった。対象は、同一事業所に一〇年以上勤務し、成績優秀で他の模範となる従業員であった。表彰には、一〇年以上、二〇年以上(平成三年度から)、三〇年以上の三つがある。この他に、各種技能大会等で入賞した者、技術開発等によって顕著な功績を挙げた者、技能優秀で長年にわたり後継者の育成指導に努めた者を対象とした技能功労者がある。また、この事業の対象は、平成一五年度に、区内同一事業所に満五年以上勤務し、成績が優秀で他の模範と認められる者で、かつ技術開発、商品開発等経営革新への功績が顕著である、サービス向上、販売促進等、経営基盤強化の功績が顕著であるなどの理由で企業経営上大きく貢献し、所属団体が推薦する者に変更された。事業の名称は「中小企業優良従業員表彰」となった。表彰の受賞者は三桁台で推移してきたが、平成一五年度以降は二桁台となっている。
【従業員レクリエーション】 従業員レクリエーションは昭和四一年度から実施されている。管轄は、商工課(現在の産業振興課)であった。この事業の目的は、区内の中小企業従業員の余暇の善用と親睦を図り、雇用の安定・定着化を図ることである。
事業内容は、①港区商店街連合会(区商連)従業員レクリエーション、②区商連野球大会、③港区工業団体連合会(工団連、平成一六年六月から港区産業団体連合会〈産団連〉、以下同じ)バスハイク、④工団連従業員レクリエーションの四つであった。①区商連従業員レクリエーションでは、ぶどう狩り、魚市場、遊覧船・ミカン狩りなどのバスハイク、ボウリング大会、納涼船など、④工団連従業員レクリエーションでは、新橋演舞場で観劇会(平成九年度まで)、ボウリング大会が行われていた。平成一三年度からは、②区商連野球大会と④工団連レクリエーションのボウリング大会のみとなった。平成一三年度~令和元年度の実施状況を見ると、区商連の野球大会には一〇チーム程度が、工団連のボウリング大会には八〇人程度が参加している。