勤労者福利文化事業の拡充

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勤労者福利文化事業は、一節二項で取り上げられている福利厚生事業の一環として実施されてきた。その事業を担っていたのが、港区勤労者共済会である。港区勤労者共済会は、平成七年度に設立された港区勤労者サービス公社の設置に伴い廃止された。この港区勤労者サービス公社は、港区勤労者共済会の事業を発展的に継承するだけでなく、勤労福祉会館等の事業を一体的に推進することになった。同公社の具体的な事業は、①中小企業勤労者の福利厚生事業(福利厚生事業と給付事業)、②各種講座(カルチャースクール教室等の実施)、③勤労福祉会館の運営であった。特に、中小企業勤労者の福利厚生事業では、結婚祝金や見舞金等の給付事業やレジャー施設等の補助金等の利用補助を行う余暇活動事業、バスツアー等のレクリエーション事業等を実施してきた。なお、平成七年度を基準に見ると、会員数は減少傾向にあった(図11-3-1-1)。

図11-3-1-1 福利厚生サービス会員数の推移

「外郭団体改革プラン」(港区、2007)から転載


その後、港区は平成一九年七月に決定した「外郭団体改革プラン」に基づいて検討をした結果、公社設立の目的は一定の成果を収めたと判断した。さらに、福利厚生サービスを提供する民間事業者が多数存在し、その内容が充実してきたことから、給付事業を除く公社の福利厚生事業の内容を維持しつつ、現行会員の負担を増大させない範囲で民間事業者に事業を委託することとした。港区は、民間事業者のノウハウとスケールメリットを活用することで、メニューの多様化や会員サービスの向上が実現できると判断した。港区勤労者サービス公社は平成二〇年度末に解散し、港区は同サービス公社が担っていた事業を、同二一年度から港区中小企業勤労者福利厚生事業(通称「みなとぴっく福利厚生倶楽部」)として継承した。
みなとぴっく福利厚生倶楽部は、港区内で事業を営んでいる従業員三〇〇人以下の中小企業や商店等の事業主および従業員を対象に、福利厚生サービスを提供するものである。同倶楽部は、民間事業者に委託して実施されており、入会した会員からの会費等をもとに、各種のレジャー施設・宿泊施設・スポーツクラブ・映画鑑賞・観劇・講演等を会員料金で提供する他、慶事給付(結婚祝品、出産祝品、就学祝品、成人祝品、銀婚祝品、金婚祝品)、弔事給付(入院見舞品、住宅災害見舞品、死亡弔慰品、障害見舞品)等の幅広いサービスを行っている。
さらに、勤労者向け資格取得支援講座では、区内中小企業従業員等の各種資格取得支援のために講座を実施している。対象者は区内在住・在勤の勤労者等である。この事業は、勤労福祉会館独自事業である。平成二七~令和元年度の事業の実施状況を見ると、宅地建物取引士、行政書士、簿記入門(日商簿記三級)、ファイナンシャル・プランナー技能検定三級、ITパスポート試験が複数回行われている。なかでも宅地建物取引士、行政書士の延べ参加者数が多い。