港区では、区民自らが自分の健康は自分で守り、つくることを基本とした「生涯健康づくり都市の実現」を目指し、地域保健福祉サービスを充実させることに注力してきた。そして平成一〇年(一九九八)四月には、従前の芝、麻布、赤坂の各保健所を統合し、「みなと保健所」を設置することとなった。その結果、本庁の保健福祉部とみなと保健所を中心的な機構として、区民の健やかな暮らしの実現が目指されることとなったのである(巻末表12-3-1-1および2)。
みなと保健所が設置された平成一〇年度の港区の主な事業は「健康づくり支援」「健康で安心できるまちづくり」「連携協力に基づく総合的な施策の推進」「医務薬事」に大別でき、より具体的には図12-3-1-1のとおりである。保健衛生事務は多義にわたることが理解できよう。

図12-3-1-1 みなと保健所の主な事業(平成10年度)

「港区の保健福祉」平成10年版から作成


このうち、「健康づくり支援」にある「医療給付・医療費助成」は、医療を必要とする未熟児に医療給付および退院後の訪問指導を行うものであり、「訪問指導」は、概ね生後二八日未満の新生児および妊産婦に対し、保健師が家庭訪問の上、保護者に適切な指導を行い、母子保健対策の一貫として異常の早期発見と発生防止について助言し、育児の万全を期すものであった。「健康教育」では、四〇歳以上の個人および家族に対し、生活習慣病の予防、健康増進等に関する知識の普及と実践のため、各種の講座や講習会を実施した。心身の健康についての自覚を高め、かつ、心身の健康に関する知識を普及啓発するため医師、保健師、栄養士等が指導教育にあたるものである。ここでは、寝たきりの状態にある人の看護方法等多様なニーズに応じた指導も行われた。「健康相談」では、心身の健康に関する個別の相談に応じ、健康への適切な保健指導を行った。「特別用途食品指導」としては、一般に不足しがちな栄養成分の補給、または、病人の回復等の特別の用途に適する栄養食品の販売に関し、その旨を表示するためには、厚生労働大臣の許可が必要であり、その許可経由事務として取り組まれた。「健康診断」は、区民に限らず、進学・就職・結婚などで港区に関係する一般の人も対象に保健所での健康診断を希望する人に実施するものであった。「衛生教育」としては、保健衛生の知識の普及と事業の周知徹底を目的に、主として集団を対象とした衛生事業を行った。さらに近年の健康増進事業への期待から港区では「港区立健康増進センター条例」に基づき「健康増進センター事業」に取り組んだ。運動・栄養・生活メニューに基づき運動実践を行い生活習慣病の予防・改善を図るとともに、区民の健康づくり活動を支援するものである。区民の健康に対する自覚と関心を高めるため普及・啓発も行う。この事業のために利用されるのが「ヘルシーナ」であった。
「健康増進センター事業」では、「健康増進事業」「健康づくり活動支援事業」「健康づくりグループの育成・援助」「健康づくり普及・啓発」に大別され、「健康増進事業」における健康増進・健康づくりのために、健康診査の結果を基に、身体測定・運動負荷検査・体力測定等の健康度測定を実施し、個人の体力に合った、運動・栄養・生活プログラムを作成することに取り組んだ。このプログラムの作成は二日間にわたるものであり、二日目には医師によるカウンセリング、栄養士による栄養指導を行った。その他、健康運動指導士によるグループでの健康づくり(健康指導コース)にも取り組んだ。平成一〇年度以降の実績は表12-3-1-3のとおりである。

表12-3-1-3 メディカルチェック実施状況の推移

「港区の保健福祉」各年版および「みなと保健所事業概要」各年度版から作成


「健康づくり活動支援事業」は、自主的な健康づくりを行うグループに活動の場を提供するとともに、エアロビクスストレッチ体操、ヨーガ教室および健康運動セミナーを開催し、健康に関する知識や技能の向上を図ろうとするものである。年々、教室や回数を増やし、参加者の増加が見られた。
なお、平成一〇年度においては、ヘルシーナを個人利用した人数は一万六三四八人であった。
「健康づくりグループの育成・援助」では、健康づくり活動を進めるグループを育成・支援するとともに、相互の交流を図る事を目的に自主グループのリーダーに対して講演会を実施した。平成一〇年度は「気楽にシェイプアップ」(参加者三四人)、「よりよい睡眠のための枕選び」(参加者二六人)であった。
「健康づくり普及・啓発」では、健康情報誌「ヘルシーナ」を年二回発行し、健康づくりの普及・啓発を進めた。発行部数は一回四五〇〇部(平成一〇年度)であった。平成一二年度以降は、コミュニティ情報誌「kissポート」やホームページなどで事業紹介を行った。加えて「健康ひろば」の開催における取組も進めた。平成一〇年度実績では、開催日は平成一〇年一一月一二・一三日であり、七〇四人が参加した。内容は体力測定、骨強度測定、パネル展示、体験コーナー(ヨーガ・ストレッチ)、講演会(演題「楽しい健康づくり」)、試食コーナーであった。
「健康で安心できるまちづくり」における「定期外の健康診断」は、「業態者検診」「事業所結核健康診断」「結核患者家族検診」「接触者検診」「管理検診」「結核対策特別促進事業検診(日本語学校)」として実施された。「業態者検診」は、「定期健康診断」で対応しない、理容・美容・クリーニング・飲食店等多くの人に接する機会のある業務に従事する人を対象とし、「事業所結核健康診断」は、結核に感染し、または公衆に結核を伝染させる恐れのある業務に従事する人が対象であった。「結核患者家族検診」では、結核患者と生活を共にしているまたはしていた家族(患者家族)等を対象に健康診断を随時実施し、「接触者検診」は、結核の二次感染を防止するため、保健所長が家族・濃厚接触者・偶然の接触者のランクを判定し、健康診断を実施するものであり、「管理検診」は結核治療後の経過観察等のために行う健康診断であり、「結核対策特別促進事業検診(日本語学校)」では、区内にある日本語学校の生徒に対して健康診断が実施された。なお、結核予防に関しては毎月、保健所で実施する三・四か月健診の際に、ツベルクリン反応検査を実施し、結果が陰性の場合にBCGを接種した。
「環境衛生対策の充実」では、人々の社会生活に深い関わりのある理容所、美容所、クリーニング所、公衆浴場、旅館業、興行場、プール等の許認可事務と、その施設の理化学・細菌検査を実施し、衛生的で安全な施設維持の向上に努める監視指導を実施した。特に区民が日常生活を送る中で欠かすことのできない飲料水や室内環境、また衛生害虫の防除等、快適な生活環境の確保のために区ではこれまで要綱を定めて積極的に事業を進めてきたが、平成一〇年度も区ではこの事業への取組を行った。さらに都心区、国際都市として経済活動を背景にした大規模なホテル、事務所ビル、マンション等の中高層建築物の数が港区は多いことから、これら建築物の建築に際して、設計段階、建築確認時に建築関係者と事前の衛生指導の実施にも取り組んだ。
加えて区民の健やかな暮らしの実現にとって「食」の持つ重要性があることを忘れることはできない。そこで港区では食品関係施設の許認可、監視指導、収去検査、食中毒調査等を実施し、食品による危害の防止と公衆衛生の向上を図るべく「食品衛生対策の充実・食品衛生関係施設と監視指導」として以下のような取組をした。
①日常の監視指導のほか、夏季は食中毒事故防止のため、原因となりやすい食品を取り扱う業種を中心に、歳末には正月食品や生食用かきの販売・ふぐ取扱店等を中心に都区共同事業として収去検査及び監視指導を実施する。
②夜間営業施設に対しては計画的に監視指導を行い、衛生水準の向上と無許可営業者の一掃を図る。
③区内に本社あるいは営業所がある船舶(伊豆七島、小笠原、釧路への各航路)の食堂についても、同様に立入して収去検査・監視指導等を行う。
④全国からの修学旅行の受入れ施設等観光に伴う施設に関しても監視指導を実施する。
⑤施設の食品取扱者に対しては、営業許可更新時や一斉検査の結果通知などの機会をとらえ、衛生教育を行い、衛生思想の普及、向上を図るよう指導する。
「収去検査」とは、食品衛生法で規格の定められている食品、東京都で衛生指導基準の定められている食品等を対象に収去を行い、細菌および理化学検査を実施し、不良食品の排除や食品等に起因する事故の発生防止を図るものであり、実際の検査は区検査担当および都立衛生研究所が担ってきた。
しかし、食品衛生対策の充実を徹底したとしても食中毒の発生をゼロにすることは難しく、食中毒が発生した際には食品衛生のため行政処分がなされ、速やかに原因施設、原因食品等を究明するための調査を実施し、施設が判明した場合には、営業停止等の措置を行い、事故の拡大防止を図ることとなる。違反品発見の場合にも流通経路の調査を実施し、販売禁止等の措置を行い違反品の一掃が求められる。
「連携協力に基づく総合的な施策の推進」において、これを実現するためには保健師の活動を欠くことはできない。保健師は、地域住民の健康の保持増進、疾病の予防および早期発見のために保健事業(健康教育・健康相談・集団健康診査・機能訓練・訪問指導等)の実施に当たって保健指導を行う。特に「地区活動」がその活動の多くを占める(図12-3-1-2)。「地区活動」は「家庭訪問」「来所相談」「電話相談」「関係機関連絡」に大別され、区民の生活に最も身近なところで展開されるものであり、保健師活動の重要な部分となる。また、地域の家族会・患者会や育児グループ等の自助・自主グループの発足や活動の助言・指導も行う。

図12-3-1-2 保健師の活動状況(平成10年度)

「港区の保健福祉」平成 11 年版から作成


「地区活動」の中でも「家庭訪問」は特に重要視され、新生児から高齢者まで、心身の健康に関する諸問題を抱えた本人および家族に対し、相談、日常生活・療養生活時等の生活指導を行う。みなと保健所の設置がなされた平成一〇年度までの「家庭訪問」の内容の変化を確認すると、精神障害・成人病(生活習慣病)に関わる訪問指導の割合が高まってきており、より広範な相談に対応してきたことがわかる(図12-3-1-3)。一方、来所した区民に対しては「来所相談」を随時実施する。各種医療の公費負担申請時の面接もここでは行う。加えてただちに来所しない区民へのサービスとして実施されるのが「電話相談」である。これは気楽に利用でき、悩みや不安を相談できる有効な手段として評価され、必要に応じて来所相談等へ結びつける契機ともなる。さらに、健やかな生活の実現のためには医療や福祉等の関係機関との密接な連携が不可欠となり、これを実現しようとするのが「関係機関連絡」である。

図12-3-1-3 家庭訪問の推移

「港区の保健福祉」平成11年版から転載


最後に「医務薬事」における「医務事業」は、医療施設に関する許認可等事務および医療従事者に関する免許事務を通しての区民への適正な医療を提供する体制の確保を図るものである。すなわち診療所、助産所、施術所(あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復)、歯科技工所については保健所長が許可または届出の受付を行い、必要に応じた立入検査や指導も実施する。都知事の有する病院の許可権の行使に当たり、保健所では申請書類等の受付経由事務に従事し、救急病院の認定に当たっては、保健所職員が実地調査を行って、都知事への意見書を作成する。区長の有する衛生検査所の登録権の行使に当たっては、都区の実施計画に基づいて監視指導を行い、厚生労働大臣や都道府県知事が授与する医療従事者の免許事務については、保健所では申請書の受付、免許証の交付等と都への経由事務を担った。
「医務事業」に対して、医薬品、医薬部外品、化粧品および医療用具の品質、有効性および安全性を確保し、適正な医薬品等の区民への供給に寄与することにより、区民の健康と安全の維持・増進を図るのが「薬事事業」である。ここでは医薬品一般販売業(卸売一般販売業を除く)、医薬品特例販売業(一般、歯科用またはガス性医薬品を取り扱う)の許可、許可更新および許可証書換交付、許可証再交付の申請ならびに返納、変更および休廃止等の届出の受付を行い、また、医薬品販売業者に対する立入検査では、店舗の構造設備、管理者の管理状況、毒薬劇薬・要指示医薬品等の取扱、無承認・無許可品・不正表示・不良品の取締、虚偽・誇大広告の排除、医薬品情報の提供・収集状況などについて監視指導する。加えて医薬品等の一斉取締を実施し、流通段階での医薬品等の不良品・不正表示品の発見のために行われるのが収去検査である。「薬事事業」では管理薬剤師を対象とした講習会も開催された。
以上、平成一〇年度を中心とした取組であるが、みなと保健所が設置されて以降、一層、少子高齢化対策が求められるようになり、健康づくりへ住民が参加しやすい環境を整えることが求められるようになる。こうした行政需要を前にして、港区では「子育てするなら、港区」を打ち出し、安心して子どもを生み、育てる環境を具体化するべく平成一八年四月一日以降、妊娠後期(妊娠二四週以降)の妊婦健康診査費用の一部と、出産のための分娩費・入院費等の出産費用の助成を、特に所得制限を設けることなく開始した。
妊婦健康診査費用の助成を受けることができるのは、平成一八年四月一日以降、妊婦健康診査(後期)を受診した区民で、受診日および申請日に港区に住民登録がある人が対象となり、助成額は三万円で、申請方法は最後の健診受診日から一年以内に、所定の申請書に、妊婦健康診査(後期)を受診したことが証明できる書類(母子健康手帳の「妊娠中の経過」欄の写し)を添えて申請する。一方、出産費用の助成については、対象は平成一八年四月一日以降に生まれた子どもの保護者で、その保護者が出産日以前から区内に居住し、かつ生まれた子どもも保護者と同居すること、またその保護者が健康保険に加入していることが条件とされた。助成内容は、出産費用(分娩費および入院費等)から、加入している健康保険から支給される出産育児一時金等を差し引いた金額を助成するというものである。出産費用の上限は単胎五〇万円で、双胎以上の多胎は一人につき一五万円が加算される。申請する際には、出産後、必要書類(①出産費用の領収書の写し、②保護者の健康保険証の写し、③出産育児一時金等の支給決定通知書の写し)を添えて、各総合支所または子ども課子ども給付係まで申請書の提出が求められた。
平成一八年には港区役所の機構改革が進められ、従前「支所」とされていたものが「総合支所」として活動を開始する。この改革にあって港区芝地区にもそれまで本庁が担当していた区域ではあるが、新たに総合支所が置かれた。港区は区役所(本庁)と麻布、赤坂、高輪、芝浦港南、そして芝の五つの地区に総合支所を置き、サービスの向上を目指したのである。この改革の背景には、「総合支所」を各地区の拠点として区民と協働しながら、地域の課題は地域で解決し、そして身近な総合支所で多様なサービスを提供する体制を作ろうとする力学が働いていた。なお、出産費用の助成額の限度額は令和二年四月からは単胎七三万円、多胎の場合は七三万円に子ども一人につき四〇万円を加算した額が限度額と拡大された。
新たな体制の下、区民は住所にかかわらずどの総合支所でも手続きの申請や相談などを行うことができ、勤務先の近くや通勤・通学の経路など、利用者の都合に合わせた総合支所を利用することもできる点が強調された。区役所(本庁)は総合支所を支援する役割とされ、五つの支援部(産業・地域振興支援部、防災・生活安全支援部、保健福祉支援部、子ども支援部、環境・街づくり支援部)と総合経営部を合わせた六部体制を整えた。総合支所には総合支所長が置かれ、これらは区役所(本庁)の五つの支援部長を兼務するとされた。
各総合支所には地域活動推進課、くらし応援課、地区政策課が置かれ、くらし応援課では保健師による地区内家庭訪問や健康相談・助言が実施され、区民等の健康保護のためのよりきめ細かなサービスの提供の実現が目指されたのであった。
そしてこの翌年には高齢者の予防接種の無料化を開始する。ここでは六五歳以上のすべての区民が、無料でインフルエンザ予防接種の対象とされた。平成一九年一二月三一日現在、満六〇歳以上六五歳未満の人であっても、心臓、じん臓または呼吸器の機能の障害、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能の障害のため日常生活がほとんど不可能な人も対象とされた。
平成一九年以降、港区では「健康づくりサポーター事業」にも着手する。この事業は健康づくりに取り組んでいる個人や企業・飲食店等の団体を健康づくりサポーターとして登録し、それぞれの活動を通じて、地域の区民が身近な場所で自主的に健康づくりを継続してできるように支援するものである。ソーシャルキャピタルとの連携による健康づくり支援であり、具体的には、①健康づくりサポーターの登録、②健康づくりに関する活動(学習会・講習会等)の実施、③健康づくりに関する情報発信および共有を進めることとな
った。
少子高齢化の進展が確認される中、健やかな生活を実現するための行政需要が高まったことで、平成二四年にはみなと保健所が新庁舎に移転する。それまでは、生活衛生センター(麻布地区総合支所二階)、保健サービスセンター(赤坂仮庁舎、三田分室)に分かれて業務を行ってきたが、平成二四年二月以降、港区休日歯科応急診療所も含めて新庁舎(図12-3-1-4)に統合されることとなった。加えて、子ども家庭支援センターは、みなと保健所と併設することにより、子どもと子育て家庭への支援の強化が図られることとなった(子ども家庭支援センターは令和三年〈二〇二一〉四月一日に港区子ども家庭総合支援センター一階へ移転)。ここで統合された休日歯科応急診療所を活用して平成二六年度には「港区口腔保健センター」の取組も始まった。同センターは区が施設を整備し、公益社団法人東京都港区芝歯科医師会と公益社団法人東京都港区麻布赤坂歯科医師会の共同運営の下、障害者歯科診療の専門医が常駐し、障害のため地域の歯科医院で対応が困難な人も安心して歯科治療を受けることができる施設となった。

図12-3-1-4 みなと保健所の各階配置図

「広報みなと」平成24年1月11日号から転載


自殺対策の取組では港区は国の動きに先行し、令和五年までの一〇年間を計画期間とする「港区自殺対策推進計画」を策定し、総合的に自殺対策に取り組むこととした。平成二八年には「自殺対策基本法」が改正されたことで、区市町村は「自殺総合対策大綱」および「都道府県自殺対策計画」を踏まえるとともに、地域の実情を勘案し、自殺対策についての計画を策定することが求められるようになる。そこで区では、国の動きに先行して策定された計画を見直し「港区自殺対策推進計画(改定版)」を策定し、平成三一年度以降五年間の自殺対策における施策の具体的な取組や方向性を示し、「みんなで支え合って、生きる道を選べる港区」をこの計画の目指す将来像とした。この将来像を実現するべく構想された「区における自殺対策の推進体制」は図12-3-1-5のとおりである。なお「⑦その他」には、高齢福祉サービス事業所、障害福祉サービス事業所、法律、労働経済、生活福祉等の各種相談機関が想定され、これらとの連携が予定された。

図12-3-1-5 区における自殺対策の推進体制イメージ

「港区自殺対策推進計画(改定版)」(2019)から転載


また、平成一九年には「港区在宅緩和ケア・ホスピスケア支援推進協議会」が発足し、がん患者やその家族に対して、治療の初期段階から支援対象とすることや支援の方向性などの検討を開始した。平成二一年二月、「港区在宅緩和ケア・ホスピスケア基本方針」が策定されると、この方針に沿った在宅緩和ケア事業が推進されるようになる。しかしその後、東京都認定がん診療病院が増加してきたことから、高度ながん治療、緩和ケアの提供がより充実してきたこと、さらには、患者の状態に応じた医療連携体制の構築が目指されるようになってきた状況を受け、平成二二年一〇月、「港区在宅緩和ケア・ホスピスケア支援推進協議会」から区長へ、在宅緩和ケア支援センターを整備すること、緩和ケア病棟・病床については区内既存の医療資源を最大限に活用できるよう調整を図ること、との提言が提出された。こうしたことを踏まえ庁内での検討を経て、平成二三年六月に「港区在宅緩和ケア基本方針(改訂版)」を策定し、「ホスピスケア」を「緩和ケア」の概念に含めること、在宅療養支援体制の充実を図り、質の高い緩和ケアを推進すること、区民への情報提供や相談体制の充実により、患者やその家族の意思を尊重した緩和ケアを推進することなど、基本的な考え方を示した。同年八月には「港区在宅緩和ケア・ホスピスケア支援推進協議会」を「港区在宅緩和ケア支援推進協議会」と改組し、具体的な施策の実施・推進についての検討が進められる。そして、こうした検討の結果、平成三〇年四月、白金台の「ゆかしの杜」に「港区がん在宅緩和ケア支援センター」(愛称「ういケアみなと」)が整備され、長年取り組んできた在宅緩和ケアを推進する体制を構築した。