新型コロナウイルス感染症の流行を受け、区では積極的疫学調査を実施し、その結果をまとめ、公表した。「感染症法」第一五条は、厚生労働大臣に「感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため緊急の必要があると認める」とき、都道府県知事に「感染症の発生を予防し、又は感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするため必要があると認める」ときは「必要な調査」を行う権能を認める。そのため国は令和二年一月一七日には、感染症法第一五条による「積極的疫学調査」の必要性を認め、「新型コロナウイルス(Novel Coronavirus: nCoV)に対する積極的疫学調査実施要領」を作成し、実施することとした。令和二年二月六日版の当該要領以降、保健所が迅速に積極的疫学調査を実施することを強調するようになり、この国の取組はその後も継続され、「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」(令和三年一一月二九日版)に引き継がれ、「国内で探知された新型コロナウイルス感染症の患者(確定例)等に対して、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第一五条による積極的疫学調査を、保健所が迅速かつ効果的に実施し、地域の医療・公衆衛生を守るため、作成された」ことが明記された。積極的疫学調査の実施の必要性を認めて以降、国はその実施を保健所に求めていった。
積極的疫学調査の必要性が認められる中、港区でも課題意識をもって積極的疫学調査に取り組んだ。調査内容は、「区内保育施設における新型コロナウイルス感染症の実態について」および「濃厚接触者の健康観察期間について」であり、前者は令和二年一一月一一日、後者は同三年一月二二日に公表した。
「区内保育施設における新型コロナウイルス感染症の実態について」調査は、港区小児科医会、港区医師会、愛育病院、東京慈恵会医科大学と連携協力して実施し、令和二年七月から一〇月までに、区内保育施設において、職員や園児が新型コロナウイルス感染症と診断された一〇施設を対象に感染の状況を分析した。施設内の十分な感染予防策を行っていた場合、園児への施設内感染は認められなかったことから、この調査を通じて区としては「十分な感染予防策を行うことにより、園児がマスクを通常していない場合でも保育園での施設内感染のリスクは極めて低いと考えられる」との見解を提示した。
「濃厚接触者の健康観察期間について」調査は、国立大学法人千葉大学総合安全衛生管理機構および国立研究開発法人国立国際医療研究センターと連携協力して実施し、令和二年四月から一一月までに、新型コロナウイルス感染症と診断された港区民一六〇六人のうち、同居人二人以上の感染が確認された二五七人を抽出し、先に発症した一一七人と後に発症した一四〇人の発症日の差を調査した。その結果、発症日の差が七日以内一二五人(89・3%)、一〇日以内一三四人(95・7%)、一四日以内一三九人(99・3%)のデータを得た。この調査を通じて区としては、「現在一四日間となっている濃厚接触者の健康観察期間は七日または一〇日に短縮できるのではないか」との見解を公表した。