港区では令和三~八年度を期間とする港区基本計画を策定し、区民が健やかで安全に暮らすことができるよう支援することを宣言する。新型コロナウイルス感染症が流行したことで、これへの区としての対策を講じる必要性がここに盛り込まれることとなった。港区では区民が健やかで安全に暮らすことができるように支援するべく、(1)感染症対策の強化・推進、(2)安心できる地域保健・地域医療体制の推進、(3)子どもの健康を守る体制をつくる、(4)健康づくりの積極的支援、(5)がん対策の強化・推進、(6)快適で安心できる生活環境の確保の推進を予定した。これらを具体化するための項目は以下のとおりである。
(1)感染症対策の強化・推進
①感染症対策の充実/②新型コロナウイルス感染症等新たな感染症への対応/③予防接種の充実
(2)安心できる地域保健・地域医療体制の推進
①地域医療体制の充実/②災害時における保健・医療体制の整備/③支え合いによる地域保健活動の強化
(3)子どもの健康を守る体制をつくる
①産後母子ケア事業の推進/②母子保健サービスの推進と関係機関との連携強化/③乳幼児健康診査の推進
(4)健康づくりの積極的支援
①生活習慣病等の予防・改善/②口と歯の健康づくりの充実/③こころの健康づくりの推進/④自殺対策の推進/⑤たばこ対策の推進
(5)がん対策の強化・推進
①がんの早期発見の推進/②地域で支えるがん対策の充実
(6)快適で安心できる生活環境の確保
①食品の安全の確保/②医療・医薬品の安全の確保/③環境衛生対策の充実/④快適な生活環境の確保
地域保健法制定以降強調されるようになる健康づくりや生活習慣病対策などに加えて、この新たな計画では新型コロナウイルス感染症の流行の影響を受けた感染症対策への取組に関心が向くように設計されている点は注目されよう。すなわち新型コロナウイルス感染症をはじめとする新たな感染症などの発生に対して、感染症の発生動向の把握やSNSや動画配信等を利用した迅速な情報提供の必要性を求めるのである。感染症対策に際して、国・地方公共団体と国民・住民が感染症の動向や注意事項等の情報を共有することがまずもって認められねばならないとしたのは、明治時代にあって日本に衛生行政の基礎を築いた長与専斎(ながよせんさい)初代内務省衛生局長であったが、この長与の指摘は令和の時代にあって改めて認められ、行政計画に盛り込まれたことは特筆に値しよう。諸外国の感染症対策に注視すると同時に歴史からの学びの重要性が再認識されることの意義は小さくはない。
感染症、そしてそのほかの疾病対策として医療の提供体制の整備は重要となるが、この計画ではこの点にも配慮され、区民が安心して医療を受けられるよう、休日・夜間診療・救急医療などにおいて、病院間、病院と診療所間の連携を促進し、地域全体での切れ目のない医療提供体制の整備に取り組むとする。加えて首都直下地震に備え、区内医療機関と連携してフェーズに応じた災害時の保健・医療体制の整備の必要性も認められた。