〔第一節 港区の福祉を捉える視座〕

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この章では、港区における社会福祉の発展について扱う。ただし、改めて指摘するまでもないことであるが、港区の社会福祉は東京都の社会福祉の一部分であり、さらにはわが国における社会福祉の一部分である。したがって、ここでは、戦後、昭和二〇年(一九四五)以降のわが国における社会福祉の発展の過程を基盤に置きながら、港区の社会福祉として特記すべき事項について記述する。
まず、この章で用いる基礎的な概念について一言しておきたい。この章においては社会福祉を公的扶助(わが国の制度名でいえば生活保護)とそれ以外の一般に福祉サービスと呼ばれている権利擁護活動、生活手段や人的サービス等の具体的な提供や貸与を含む社会的な施策、民間における関連する活動などの総称として用いる。介護保険による介護サービスについても、財源調達の方式は異なるが、人的サービスが中心となっていることに留意し、社会福祉に含めることにしたい。その他、年金、医療等の社会保険、子ども手当等の社会手当、公衆衛生等については、必要に応じて個別に取り扱う。
社会福祉に限らず、歴史的な経緯や過程について論じるにあたっては、事実の平板な記述になることを避けるために、あらかじめ時期区分を行うのが一般である。一九四〇年代以降の社会福祉の時期区分については、高澤武司、古川孝順、岩田正美などの先行研究による議論がある。ここでの課題は、一九四〇年代以降のわが国の社会福祉の展開の中に港区における社会福祉の発展を位置付け、その将来を構想する手がかりとすることにある。そのため、先の研究者たちの時期区分を参考に時期区分を設定した。第Ⅰ期は昭和二〇年から同三四年までの定礎期である。第Ⅱ期は昭和三五年から同五四年までの拡大期である。第Ⅲ期は昭和五五年から平成一一年(一九九九)までの改革期である。そして、平成一二年以降、今日までを第Ⅳ期とし、転換期とする。
表13-1-1においては、これらそれぞれの時期について、特記すべき歴史的事項や動向を全国レベル、港区レベルに分けて記載する。以下、この表を背景に、国レベル、そして港区における社会福祉についてそれぞれの時期の特徴やその意義について概観する。  (西田恵子)

表13-1-1① 国内・港区の社会福祉の主な動向

表13-1-1② 国内・港区の社会福祉の主な動向

表13-1-1③ 国内・港区の社会福祉の主な動向

表13-1-1④ 国内・港区の社会福祉の主な動向

表13-1-1⑤ 国内・港区の社会福祉の主な動向

表13-1-1⑥ 国内・港区の社会福祉の主な動向

【 】内は、A…全体、B…生活援護、C…子ども福祉、D…障害者福祉、E…高齢者福祉、F…地域福祉、G…その他を指す