福祉三法体制の形成

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福祉三法のうち、旧生活保護法(昭和二五年に現行生活保護法に改正)が制定されたのは戦後間もない昭和二一年のことであり、続いて児童福祉法が同二二年に、同二四年に身体障害者福祉法が制定された。さらに、昭和二六年には、それら福祉三法の運用、実施過程を支える社会福祉事業法が制定されている。
第Ⅰ期における社会福祉の課題は、戦争中から敗戦後に引き継がれる国民生活の疲弊、大衆的窮乏である。具体的にいえば、生活物資の不足、戦災による住宅の焼失、飢餓的な生活水準に陥った膨大な数の国民、海外植民地からの引揚者、復員兵士、傷痍(しょうい)軍人、疎開や戦災によるおびただしい数の孤児・浮浪児たちの生存・生活をどのようにして確保し、維持するかが緊急の課題であった。そのような課題に直接的に対応するために制定されたのが、福祉三法である。
福祉三法の制定、運用、実施には、それらに先行する臨時的応急的な行政レベルの施策の策定や実施を含め、戦前以来の既存の制度との整合性の確保、法律の運用、実施に必要とされる財源、物資、職員(マンパワー)の確保、アメリカを中心とする連合国最高司令官総司令部(GHQ)の関連部局との折衝、承認のとりつけなど、多大な困難がつきまとった。国の責任において国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障するという理念は、昭和二一年一一月に公布され、翌年五月に施行された日本国憲法の第二五条において、生存権が国民の固有の権利として位置付けられ、それを保障する措置の実施を国に求めるという趣旨が明確に規定されたことによって、より確実なものとなった。