民間による救済事業とその法制化

118 ~ 118 / 339ページ
しかし、新しい理念を謳いあげる社会福祉の制度はできても、それを運用する国の財政や行政に関わる諸条件は容易には整わず、地方自治体においても大きな負担、努力が求められることになった。さらに、現実的な問題として、いずれの制度も、運用、実施の過程においては、民間による活動や事業によるバックアップが求められた。領域によっては、民間の努力なしには施策の運用、実施が成り立たないという状況にあった。その一方において、GHQからは、社会福祉に対する国や地方自治体の責任を明確化することが求められ、国や地方自治体がその責任を民間における活動や事業に依存するという状況に対して厳しい批判が寄せられた。いわゆる公的責任の原則、公私分離の原則などからなるGHQ三原則の指令である。
政府は、これらの要求や批判に対処するため、戦前以来の社会事業法を「社会福祉事業法」に改正し、民間の事業家たちに一定の条件の下に法人格(社会福祉法人としての資格)を取得させることによって、その貧困者救護、戦災孤児浮浪児養育の事業を公的な規制監督の下に置き、それと引き換えるかたちで国や地方自治体が民間の事業者に対して公費を支出(措置委託費)することを認める社会福祉法人の制度を設けることにした。こうした経緯の中で、民間による任意的自主的な活動、事業の中から多数の社会福祉法人が誕生し、今日の発展につながる基盤が準備された。