戦後危機対応から復興へ

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昭和二七年四月、わが国はサンフランシスコ講和条約によって被占領状態を脱却し、主権を回復する。その背景には、朝鮮戦争による国際関係の変化、戦争によってもたらされる特需をきっかけにした日本経済の復興があった。昭和三一年前後には、一方においては「もはや戦後でない」(経済白書)という経済的な復興から成長への期待があり、他方には「戦後はまだ終わっていない」(厚生白書)という国民生活の現実があった。
そうした中で、まず昭和二七年には戦傷病者戦没者遺族等に対する援護制度、戦争による母子家庭に対する経済的支援制度(母子福祉資金貸付等)が導入された。次いで、昭和二八年には「恩給法」が改正されて軍人恩給が復活し、また未帰還者留守家族等に対する援護制度が導入された。いずれも、社会福祉の施策における無差別平等が求められた被占領下において実施することが困難であった戦没者・戦傷病者に関連する困窮者等への援護等の事業であり、一部においては戦後改革に対する逆コースという批判も寄せられた。