福祉国家への批判、そして改革は、イギリスではサッチャー首相、アメリカではレーガン大統領によって推進されたが、わが国では、中曽根康弘内閣総理大臣によって強力に推進された。一九八〇年代以降の福祉国家政策は、各種国有企業や住宅政策の民営化、社会保障・社会福祉関係予算の削減や見直しなどの行財政改革、国民による選択の自由や自己決定の尊重、そしてそれと表裏の関係にある自助努力と自己負担を求める制度改革の推進を特徴とする。社会福祉関係では、八〇年代に始まる福祉見直し、福祉予算の改革にかかる「福祉改革」から九〇年代末の「基礎構造改革」に至る社会福祉「改革」は、戦後以来の国中心の社会福祉体制を覆す福祉改革として批判的・否定的に捉えられる側面とともに、社会福祉の地域化、社会福祉の専門職化、福祉サービスの選択権、自己決定権の承認など社会福祉に新しい展開をもたらす積極的な側面など多様な側面をもっており、その全体を捉えようとすれば、多角的、複眼的な視点と分析枠組が必要とされる。