都道府県・市町村への福祉予算の転嫁と自由裁量

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昭和六〇年(一九八五)には、社会保障・社会福祉にかかる国の財政負担を削減することを目指して「国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律」が制定された。それまで、社会福祉に関係する費用の負担は、国の負担一〇分の八、都道府県一〇分の二(施策によっては都道府県一〇分の一、市町村一〇分の一)の比率で実施されてきたが、この措置によって最終的には生活保護は国が四分の三、残りの四分の一を都道府県ないし市町村が、福祉サービスは国が二分の一、残りの二分の一を都道府県・市町村が分担するように改められた。
これに伴い、昭和六一年には「地方公共団体の執行機関が国の機関として行う事務の整理及び合理化に関する法律」が制定され、従来、国の社会福祉にかかる権限の執行で都道府県知事や市町村長に委任されてきた機関委任事務のうち、福祉サービスについては都道府県や市町村に委任する団体(委任)事務に改められた。
これらの措置によって、都道府県や市町村は従来に比較し、大幅な費用の負担増を求められることになった。その一方、福祉サービスが団体(委任)事務になったことによって、都道府県や市町村の福祉サービス行政は、一定の自由裁量の余地を獲得したことになり、都道府県なかでも市町村はそれぞれの自治体における人口構造、家族構造の状況、そして福祉ニーズの実態状況に応じた福祉サービスを実施することが可能になった。