施設福祉から在宅福祉サービスへ

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社会福祉の領域において地域社会(コミュニティ)のあり方を取り上げた初期の文書は、昭和四六年の中央社会福祉審議会による「コミュニティ形成と社会福祉」である。この文書は、高度経済成長期における都市部への労働力の大量の移動によって各地に団地(集合住宅)が形成され、従来の血縁や地縁を紐帯とする共同体的な社会とは異なる新しい社会が形成され、そのあり方が社会問題化したことを背景に、社会福祉協議会が従来の事業者組織(組織化型)や運動組織(運動型)としてのあり方から脱皮し、地域社会のつながりの形成に関心をもつようになったことに関わっている。
従来の入所施設を中心とする施策の拡大には財政的に限度があり、かつ入所施設による生活の支援という方法それ自体に対する批判(脱施設化・ノーマライゼーション)に対処して、在宅福祉サービスの創出、拡大を当面の課題とすることになった。昭和五四年の全国社会福祉協議会による「在宅福祉サービスの戦略」はそのことを物語っている。
こうして、昭和五五年に在宅障害者デイサービス事業が発足し、同五七年には身体障害者家庭奉仕員派遣事業が開始された。このような在宅福祉サービスは高齢者福祉の領域にも拡大し、やがて在宅福祉サービスの中心を構成するホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイが在宅福祉の三本柱として定着するようになった。
こうした経過の中で、区市町村の社会福祉協議会は、在宅福祉サービスの実施機関という性格を期待されるようになった。すなわち社会福祉協議会は、かつての組織化型、運動型から事業型の運営が図られることになった。