平成二年度の初頭、保育サービスの領域において、福祉サービスを受給する手続きのあり方を、従来の措置による受給という方式から受給者の申請による受給に改めるという議論が厚生省による提案というかたちで開始された。それまで社会福祉のうちでも生活保護は、区市町村・都道府県に保護の申請がなされた場合に必ず保護受給の適格性、保護の程度、方法等について審査し、その結果を申請者に伝え、必要な保護を行うこととされてきた。しかし、福祉サービスにおいては、その必要性やサービスの形態や内容についての判断は、サービスを求める人々による福祉事務所、児童相談所、行政窓口への相談というかたちで開始された。そのような方式が福祉サービスに関する手続きにも認められていく。しかし、それは事務手続き上のことであり、受給者に申請権を認めるものではなかった。受給者は、サービス提供権限者による必要性の認知、適格性の判断、サービスの形態や内容の決定を待ってサービス受給の可否や内容を知ることが可能であった。
改革案は、まず従来の保育サービスの対象、保育サービスの受給者という名称を保育サービスの利用者に改め、さらに利用者が利用したい保育所を指定して利用の申請を可能にしようというものであった。平成九年の児童福祉法改正は、保育サービスの受給を従来の措置方式から利用希望の保育所の指定を含む利用申請方式への転換を実現する内容となった。