わが国における高齢者保健福祉の発展にはいくつかの転機があった。まず、昭和四四年に、革新知事として知られた美濃部亮吉東京都知事によっていわゆる老人医療費の無料化が実施された。無料化とは医療費の個人負担分を公費によって負担するという意味である。この措置は、昭和四八年の老人福祉法改正によって老人医療費支給制度として法制化される。その時代の変化の過程で、昭和五七年に老人保健法の制定により老人医療費支給制度は廃止される。さらに、昭和六一年には老人保健法の改正により、病院(施設)と自宅の中間に位置し、機能する中間施設としての老人保健施設が導入された。しかし、以後においても高齢者の医療や介護問題は超高齢化社会を迎えたわが国にとって最大の課題であり続けた。
この課題を抜本的に解決する施策として制定されたのが、平成九年の「介護保険法」である。介護保険はその特徴として二つの側面をもっている。第一の側面は、財源調達方式として部分的に保険方式が導入されたことである。第二の側面は、利用申請方式の導入に先鞭をつけた保育サービスの場合と同様に、利用希望者による介護サービスの選択と決定を伴う申請手続きを基本とする申請主義を導入したことである。加えて、介護保険制度は、介護サービスの利用希望者と提供者の間の調整を専門的に実施するケアマネジメントが導入された。