平成一一年には、地方分権改革を実施する「地方自治法」が改正された。この法律によって従来の機関委任事務、団体(委任)事務が完全に廃止され、法定受託事務と自治事務に改められた。これによって、国と地方自治体との関係は、「上下・主従」の関係から「対等・協力」の関係に置き換えられることになった。
社会福祉との関わりでいえば、この法改正によって、昭和六一年の地方公共団体の執行機関が国の機関として行う事務の整理及び合理化に関する法律によって始まった国と地方自治体との関係は、生活保護については法定受託事務に、福祉サービスについては自治体、中でも基礎自治体としての市町村の自治事務として位置付けられることになった。
これによって、福祉サービスについて市町村は自由に裁量を行う権利をもつことになるが、責任も大きなものとなった。ただし、自治事務になったとはいえ、福祉サービスの種類、形態、実施の手段や方法、費用、利用に伴う受益者の負担などに関する基本的な枠組は国が法令に基づいて定め、運用管理することになり、自治体による裁量の範囲は限定的なものにならざるを得ない面がある。あわせて、自治体の裁量が拡大したことになり、自治体による格差が生じることは避けられない。