港区の児童人口は平成元年から同六年までの五年間で27・3%減少した。これは女性の社会進出に伴う出生率の低下と子育て世代の転出によるものと推定される。保育園の入園対象の乳幼児も28・6%減少し、保育園の定員割れが生じた。区の人口減という事態は子どもを対象とした施策に変化を及ぼした。
基本構想は「児童の福祉環境の向上をはかる」として「都心における児童の生活の場の確保につとめ、とくに、ひとり親家庭、多様な就労形態をもつ共働き家庭の児童を含めて、すべての児童が心身ともに健やかに育つように、地域の教育力を高め、児童の生活環境の向上をはかる」ことを目指した。また、「幼少人口の減少がすすみ、児童が地域で孤立したり、育児不安を抱える家庭が増えるなど、保育ニーズは多様化している」との認識に立ち、「これらに対応して児童の福祉環境の整備につとめる」ことも目指した。
「ひとり親家庭の福祉の充実をはかる」ことも基本構想に位置付けられ、「ひとり親家庭における子どもの健やかな育成や生活の自立と向上を支援するため、就労などの相談機能を高めるとともに生活援助の施策を充実する」「親子のふれあいやひとり親家庭相互の交流を促進する」ことが目指された。
子育て世代への支援策として定住促進、医療費助成、相談機能の充実を図るとともに、保育ニーズに対応した保育園の整備、学童数に合わせた学童クラブの整備に努められた。
昭和六一年には私立保育所に対して特別助成が実施されることとなった。平成八年には保育園で延長保育が開始された。同年は他に、児童館を土曜日・日曜日にも開館すること、乳幼児医療費助成制度の対象年齢を拡大することなどが行われた。
平成一一年、港区はエンゼルプランを策定した。