令和元年(二〇一九)一二月、厚生労働省の地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会は「最終とりまとめ」を提出した。そこには、これからの社会福祉において機軸となるべき「地域共生社会」の理念が以下のように示されている。
地域共生社会の理念とは、制度・分野の枠や、「支える側」「支えられる側」という従来の関係を超えて、人と人、人と社会がつながり、一人ひとりが生きがいや役割をもち、助け合いながら暮らしていくことのできる包摂的なコミュニティ、地域や社会を創るという考え方。福祉の政策領域だけでなく、対人支援領域の全体、一人ひとりの多様な参加機会の創出や地域社会の持続という観点に立てば、その射程は、地方創出、まちづくり、住宅、地方自治、環境保全、教育など他の政策領域に広がる。
「人と人、人と社会がつながり、一人ひとりが生きがいや役割をもち、助け合いながら暮らしていくことのできる包摂的なコミュニティ」を構築するという地域共生社会の理念を追求するという提案については誰しも異存はないであろう。しかし、地域共生社会の構築という構想を、福祉集権主義を改め、基礎的自治体(区市町村)に本来的な自治事務として位置付け、社会福祉協議会を機軸に地域社会に区市町村の地域福祉計画と連携し、連動する地域福祉活動計画の策定を求めてきたこと、さらに社会福祉のシステムを公助中心から自助共助を中心とするものに改めるという政策構想が提起されてきたという文脈の中に重ね合わせるとき、そこには地域共生社会を目指すに当たって克服すべきいくつかの課題も垣間見える。