基本構想は「ゆたかで自立した地域での生活を支援する」「健やかで安全に暮らすことができるように努める」として、「多様で柔軟な福祉サービス供給体制の確保・整備」「多様な在宅福祉・施設福祉」「障害者の就労や活動の場の確保」「利用者本位の権利養護・苦情解決システムの構築」を進めることを明らかにした。ボランティア団体、NPOなどを育成・支援、協働を進めることも明らかにした。
これに基づき、障害者総合相談窓口の設置、知的障害者入所・通所施設の整備、重症心身障害児(者)通所事業開始、精神障害者ホームヘルプサービス、精神障害者地域生活支援センターの設置、民間グループホーム設置の支援、コミュニティバス乗車券の発行、福祉売店・福祉喫茶の設置など様々な施策展開が図られた。具体的な展開は次のとおりである。
まずこの期の初期である。在宅福祉サービスとして平成一三年に配食サービスが、同一五年に介助入浴が開始された。平成一六年に港区障害者サービス苦情解決委員会が設置された。同年、音声ソフトを使用したホームページ「みなと障害ネット」が開設された。翌一七年には特別障害給付金制度が開始された。さらに同年、精神障害者地域生活支援センター「あいはーと・みなと」で日常生活支援等の新しい福祉サービスが開始された。主に精神に障害がある人やその家族の人々が地域で安心して暮らせるように支援し、社会復帰およびその自立と社会参加の促進を図るものであった。平成一八年には知的障害者更生施設「新橋はつらつ太陽」が開設された。同年には港区障害程度区分審査会が設置されている。そして平成一九年三月、港区障害福祉計画が策定された。
第一期の計画期間に入った平成一九年、港区障害者社会福祉事業団がNPO法人みなと障がい者福祉事業団となった。翌二〇年には成年後見利用支援センター(サポートみなと)が開設された。
第二期の計画期間に入った平成二二年、港区発達支援連絡協議会を設置し、子ども家庭課、教育委員会、保健所等との間に連絡体制を構築し、発達支援のネットワークを形成した。翌二三年、発達支援センター事業が実施されることとなった。これにより療育支援体制の調整をより円滑にすることとなった。
第三期の計画期間に入った平成二四年、障害者福祉課内に障害者総合相談支援センターと港区障害者虐待防止センターが開設された。平成二六年には区立障害者グループホーム芝浦が開設された。
第四期の計画期間に入った平成二七年、民間事業者の放課後等デイサービスの設置・整備に対する支援を開始した。障害児や発達に支援が必要な児童の放課後等の居場所および療育の場の確保を目的としたものである。その後、障害児通所支援サービスの事業者が多く参入したことから、令和二年度末を目標とした五か所以上の運営が早期に達成されることとなった。障害者の生活支援サービスの提供主体は港区においても多元化の動きがさらに顕著となった。例えば、平成二八年に一般社団法人が障害者グループホーム「アプローズHouse南麻布」を、令和三年に株式会社が障害者グループホーム「クライスハイム高輪」を開設している。その一方、平成二八年には区立精神障害者地域活動支援センター「あいはーと・みなと」を開設し、前年度まで民間事業者に委託していた事業を区施設で実施することとなった。平成二九年に社会福祉法人が障害者グループホーム「六本木ヒルサイドホーム」を、令和二年に区立障害者支援ホーム南麻布と区立児童発達支援センター「ぱお」を開設した。福祉サービスの市場化を受け入れながらすべてを委ねるのではなく、様々なセクターがそれぞれの特徴をもってサービス提供に臨み、利用者は選択するという環境づくりが進められた。第四期ではこれらのほかに、平成二八年に(仮称)南麻布四丁目福祉施設整備計画を策定している。
「障害者差別解消法」施行を契機に、将来にわたり障害者施策を継続的かつ安定的に推進するため障害者福祉推進基金を創設し一〇億円を積み立てたことも港区独自の取組である。
一連の福祉サービスの拡充への取組のほか、バリアフリー、ユニバーサルデザインの観点を生かしたまちづくりも計画的に進められた。まず平成一四年に港区バリアフリータウンマップが作成された。平成一九年には「港区交通バリアフリー基本構想」が策定され、五つの重点整備地区を定め、地区ごとの計画を推進することとなった。平成二一年、冊子「港区バリアフリータウンマップ」を発行し、港区カラーバリアフリーガイドラインが策定された。色覚に障害があり、色の識別が困難な人が少なくないことや、不便な思いをしている問題を捉え、色覚に障害がある人への配慮がある暮らしやすいまちづくりを目指したものである。このことは他のバリアフリーへの取組と同様に、行政や福祉施設等のみの課題ではなく、社会全体の課題であるという認識に立つものである。これまであまり意識されてこなかったハンディキャップを多くの人が理解し、ともにその改善を図るという姿勢を共有するということ、当事者、利用する側の視点に立つことの必要を捉えた営みの一般化を進めるということである。このガイドラインは、区が作成し配布する印刷物、新築・改修する公共施設に整備・設置する案内板等の色使い等について配慮すべき内容を例示しており、それを参考にさらに普及していくことを期待している。
国の「バリアフリー法」改正(平成二三年)を背景に、区は現在のバリアフリー整備水準をさらに高め促進することにした。平成二六年には港区バリアフリー基本構想が改定され、バリアフリーのまちづくりを交通に限定せず、ハード・ソフトの両面から目指すことがあらためて打ち出された。平成二九年にユニバーサルデザインの推奨がなされ、あわせてそれまでの港区バリアフリータウンマップを再構築し、スマートフォン、携帯電話等からも閲覧できるなど利便性の向上を図った港区バリアフリーマップが公開された。